信じる者の幸福[1]
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目の前のモニターに映るのは。

一瞬にして炎上した建物。
噴き上げる黒煙。
心臓まで響いた、爆発音。

耳元のインカムからは、雑音しか聞こえて来なくて。
何が起きたのかを脳が認識した瞬間、弾かれたように椅子から立ち上がった。

迸しりそうになった悲鳴を、両手で口元を押さえて飲み込んだ。
視線が、モニターに釘付けになる。

そこに映っているのは、今まさに戦いが繰り広げられていた現場の映像で。
そこには、タイガー&バーナビーの2人がいるはずなのだ。

だがカメラに映るのは、燃え盛る炎だけで。
何がどうしてこうなったのか、情報は何もない。
ただ、悲劇的な映像だけが届いていた。

先程まで、いつもと何ら変わりなかったのに。
バーニィと虎徹さんが、下らない言い合いをしながらも敵を追い詰めていって。
なんだかんだ良いコンビだな、と微笑ましく思いながら。
2人の動きを分析しつつ、戦いをフォローしつつ。
いつもと同じはずだった。

もちろん、ヒーローは命懸けの仕事だ。
出動の際はいつだって、万が一を想定している。
送り出す時は当然心配するし、モニタールームで気を抜いたことなどない。
だが、あのスーツの性能と2人の実力は私が1番良く分かっている。
命を懸けて戦うヒーローを死なせないために、私たち開発部が全身全霊を懸けて作ったスーツなのだ。
だから大丈夫だと、自信があったのに。

今、目の前で起こったことが。
耳に流れ込んでくるノイズが。
その自信を揺るがす。
もしかして、と不安が襲う。

あの2人の身に、何かあったのではないだろうか、と。

ちらりと、分析用ではなく市民に放映するために編集されているヒーローTVが映るモニターに目をやれば。
映像はCMに切り替わっていた。
アニエスの判断だろう。
こんな映像を流したら、局は問い合わせの電話で回線がパンクすること間違いない。

不意に、メンテナンスルームの電話が鳴って。
その音に、びくりと肩が跳ねた。

仕事だ、落ち着け。
必死で自分に言い聞かせて。

「はい、アポロンメディア、開発部です」

TV電話に向かって、言い慣れた台詞を。
声が震えないようにと、拳をきつく握りしめた。

「ナマエ、どうなってるの?」

電話の相手は、案の定アニエスで。
その問いも、予想通りだった。

「分かりません」

だが、残念なことに。
こちらが用意できる答は、それだけだった。


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