君が失った全てのもの[2]
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「おはよ、バーニィ」

誕生日は、その言葉から始まった。

それはいつもと何ら変わりない挨拶だったけれど、そのシチュエーションはバーニィを大層驚かせただろう。

バーニィが私の家に泊まった日の朝、大抵私の方が先に起きる。
コーヒーと朝食の支度が終わった頃にバーニィが起きてくるというのが常なのに。
今朝私は目が覚めた後も、緩やかな拘束をするバーニィの腕の中でまどろんでいた。
肌綺麗だなとか、睫毛長いなとか。
ぼんやりと彼を観察しながら過ごしていると、やがてバーニィが僅かに身じろいで瞼を開けて。

そして冒頭の台詞に戻る。

バーニィはまだ覚醒しきらない頭でゆっくりと状況を把握するなり、ふわり、と嬉しそうに笑った。

「おはようございます、ナマエ」

そのまま、いつもよりもずいぶんと遅い時間まで、ベッドの中で温もりを分け合った。

ようやく起きてきたのは朝とも昼とも言えないような時間で。
交替で顔を洗って、私はブランチの用意を。
バーニィはリビングのソファで、パソコンを弄ってニュースを見ている。
いつもと変わらない、休日の風景だ。

最近になってようやく見慣れてきた、バーニィの私服。
寒い時期は大抵細身な黒っぽいデニムのジーンズと、上にゆったりとしたニットを合わせている。
それはとてもシンプルなのに、なぜだか凄く格好良く見えて。
恋人の欲目かなと小さく笑う。

食事のあとは、リビングでコーヒーを。
どこか出掛けたい所ある、と尋ねれば、このままがいいですと返されたから。
今日は1日家でまったりコースに決定だ。

毎日が忙しい身だから、やはり身体が休息を欲しているのだろう。
そして、それは私も同じことだ。

本を読んだり、他愛のない会話を交わしたり。
そうやって、優しい時間を重ねていく。

夕方になって晩ご飯のリクエストを聞けば、ラザニアがいいと言われた。
バーニィが最近気に入っているメニューの1つだ。
材料の買い出しに行ってくると告げれば、一緒に行くと言い出して。
近所のスーパーまで2人で買い物に出掛けた。

片道5分という近場を、手を繋いで歩く。
最近は陽が傾くと肌寒くなってきた。
でも、バーニィの大きな手に包まれた右手は暖かくて。
スーパーでカゴを持つバーニィを、似合わないと笑ったり。
夕食のスープの中身は何にするかで盛り上がったり。
そんな些細なことが、2人でいれば楽しくて。

帰り道、荷物を全部持って歩いてくれるバーニィが、とても愛しく感じた。


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