祝福のつもり[1]
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「ん〜、これ美味しい〜」
「え、ほんと?一口ちょーだいっ」
「ずるい、私も!」

そんなやりとりをする3人の目の前には、パスタの盛られた白い皿が3枚。

ネイサンとカリーナ、そしてナマエは今、シルバーステージにあるカフェ風のレストランでランチの真っ最中だった。
日当たりの良いテラス席を設けたこの店は、ナマエのお勧めである。

久しぶりに女子会を、というネイサンの声で彼女たちは集まった。
いつもはここにパオリンも加わるのだが、今回彼女は用事があるとのことで。
3人だけの女子会は、まずはパスタに舌鼓を打つところから始まった。

カリーナは秋らしく、茸たっぷりのクリームパスタを注文し。
ナマエはあっさりとしたボンゴレビアンコを、ネイサンはペペロンチーノをそれぞれ頼んだ。
ランチセットということで、さらにスープとサラダ、デザートまで付いている。

女同士というのは、なぜか会話が弾むもので。
仕事の話に始まり、美容の話、同僚の噂話、果ては恋愛話まで。
内容は様々に、尽きることを知らない。

先程から、ネイサンが尻フェチについて熱く語ったり。
ナマエとネイサンで、虎徹とはどうなっているのとカリーナを追及してみたりと、大盛り上がりだ。

カリーナが、同僚である虎徹を邪険に扱いながらも好いていることに、当然2人は気づいていて。
むしろ、周りはなぜ気づかないのか、2人には不思議で仕方ない。
あんなに分かりやすいのに、と。
どうやらヒーローたちは、恋愛にとことん疎いらしい。
それもそうだろう。

超が付くほど鈍感な虎徹に始まり、天然のキース、恋愛なんて単語がかなり不似合いなアントニオ、まだまだ子どもなイワン。
気づけという方が無理なのかもしれない。
唯一勘の鋭さにおいて期待出来そうなのはバーナビーだが、何せ彼自身に恋愛経験がない。
そんな訳で、傍から見て一目瞭然なカリーナの恋心に気づいているのは、今のところネイサンとナマエだけだ。

「あんたね、あの超鈍感なタイガーはそんなんじゃ一生気づかないわよ。もっとちゃんとアピールしないと!」

そう力説するのはネイサンだ。

「…別に、いいもん。好きじゃないし!」

カリーナは、そう否定するけれど。
そんな真っ赤な顔で言われてもなあと、ナマエは笑った。

もちろんナマエは虎徹と仲が良いから、彼がカリーナに対して向ける感情が何であるかを知っている。
それは仲間としての信頼であり、娘に向ける愛情にも似ている。
つまり、決して男女の愛情ではない。
報われない恋だと、知っている。

だが、決して無駄ではない。
その経験は、必ず糧となるから。
だから精一杯恋をしてほしい、と。
ナマエは思っていた。


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