キスで確かめてこの愛を[4]
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結論から述べると、宗像のセックスは上手だった。
元々、器用で頭が良く、好奇心旺盛で要領も良く、さらには洞察力に優れた人なのだ。
セックスが下手なはずがなかった。

仰向けに寝転んだナマエの上に、宗像が覆い被さる。
硝子細工に触れるかのごとく慎重に頬を撫でられ、逆に擽ったかったがナマエは何も言わなかった。
ゆっくりと、確かめるように宗像の唇が降ってくる。
少し重ねては離れ、また重なる。
その一つひとつから温もりが伝わってきて、じわりと胸が熱くなった。
唇を微かに開けば、おずおずと宗像の舌が入り込んでくる。
しかしその躊躇いがちな侵入とは裏腹に、先ほどのキスですっかりマスターしたのか、舌の動きは的確だった。

「……ぅ、……ん、」
「ふ……っ、ぅ……」

互いの呼吸と唾液が混ざり、鼻から声が漏れる。
んん、とナマエから零れた音を聞きつけた宗像が、真っ直ぐに見下ろしてきた。
普段涼しげな色を湛えた双眸に、隠しもしない情欲が揺らめいている。
凶暴に燃え盛る炎ではない。
全てを甘く溶かすような炎だ。
囚われて、逃げ出せなくなる。

「……脱、がせても……大丈夫ですか……?」

それなのに、相変わらず口から零れる言葉は辿々しく、伺いを立てるような口調のままで、そのギャップが妙に擽ったかった。
こくりと頷けば、宗像の手がワンピースへと伸びる。
ぎこちない手つきでボタンを外され、身体の内側が火照った。
下着だけの姿になったナマエを、宗像がじっと見つめてくる。
浮き出た喉仏が上下したのを見、ナマエは宗像に手を伸ばした。

「室長も、」

寝転んだまま宗像の腰に手を回し、帯を解く。
そのまま滑らかな生地を両肩から落とした。
浴衣の下から現れた身体は、ナマエの想像以上に綺麗だった。
色白で線が細く、だが決して華奢ではない。
鍛えられた腹筋は見事に割れていたし、胸板も厚かった。
すらりと長い腕や脚にも程よい筋肉がついており、どこにも過不足がない。

「……あの、ナマエ……そんなに見つめられると……」

思わず上から下までをまじまじと見つめていると、か細い声で羞恥を訴えられる。
ナマエはくすりと喉を鳴らし、宗像の胸板に手を添えた。
硬い筋肉の奥から伝わってくる、速い鼓動。
緊張なのか、それとも興奮なのか。
ちらりと宗像の下肢を確認すれば、黒い下着の中心は既に熱を持っていることが見て取れた。

「ナマエ」

恐らく、羞恥心の限界だったのだろう。
名前を呼ばれるとともに唇を塞がれ、視界を遮られた。
小さく笑いながら、その口付けを受ける。
宗像が上体を起こすタイミングで、ナマエはその首に腕を回し一緒に起き上がった。
その方が、背中のホックを外しやすいかと思ったからだ。
宗像に抱きついたまま待っていれば、大きな手が緊張気味にナマエの背中を這い、やがて圧迫感から解放された。
するりと下着を落とせば、少しばかり距離を取った宗像が息を呑む。
穴が空くほど見つめられ、さっき人には見るなと言ったくせに、と揶揄いかけたがやめた。
宗像の手を取り、自らの胸元へと誘導する。

「大丈夫ですよ、壊れませんから」

固まってしまった宗像にそう笑いかければ、ゆっくりと手の中に包み込まれた。
残念ながら淡島の質量には到底敵わないが、たぶん丁度いい大きさというやつなのだろう。
普段軽やかにサーベルを握る手に恐る恐る胸を揉まれるというのは、なんとも不思議な感覚だった。
宗像の手は綺麗だ。
指が長く、少し筋張っていて、透き通るような白い肌に血管の走りが見て取れる。
その手から柔らかな刺激を与えられ、ナマエは心地良さに目を閉じた。

「………ん、……ぁ……」

先端を指先で撫でられ、声が漏れる。
宗像は、それを聞き逃してはくれなかった。

「ここ、ですか?」

きゅ、と軽く摘まれ、思わず背中が反り返る。
ナマエは何も言わなかったが、それが明確な肯定になってしまったことだろう。
嬉しそうに微笑んだ宗像が、赤く色付いた先端を集中的に刺激し始めた。

「……美味しそう、ですね」

何とも返事に困る感想と共に、宗像の舌が胸の突起をぺろりと舐める。
この天然、とナマエは心の中で罵った。
最初はぎこちなかった動きも、すぐにコツを掴んだのか滑らかになってくる。
舌を絡められ、唇で擦り合わされ、甘噛みされ、散々虐められてナマエは身体の芯が蕩けていくのを感じた。

「……ん、ぁ……っ、あ、しつちょ、……っ」

指と舌とで両方の胸を愛撫され、ナマエは堪らずに声を上げた。
胸元で、宗像の笑う気配がする。

「もっと、聞かせて下さい。君の声はとても可愛らしい」

いつの間にそんなことを言う余裕を取り戻したのだろうか。
妙に悔しくなったナマエは、宗像の頭に回していた右手を下ろし、そのまま宗像の中心をなぞり上げた。
それは、下着の上からでも充分な刺激になっただろう。

「ひぁっ、………ナマエ!……だ、めです……っ」

ひくん、と身体全体を跳ねさせて、宗像が上擦った声を上げる。
耐えるように俯いた宗像の視線が落ちる先で、ナマエはやんわりと手を動かした。

「ん、んん……っ、あ、ぅ………ん、」

熱く硬くなった欲望を刺激すれば、宗像が荒い息を吐き出して震えた。
あまりにも窮屈そうだったので、宗像の下着を脱がせる。
体格から考えれば相応なのかもしれないが、人形みたいに美しい顔からは想像もつかないような立派なものが天を仰いでいた。
だけどそんなところまで、宗像の身体は美しい。
顔を上げて、膝立ちになった宗像の顎先や唇の端に口付けながら片手で屹立に直接触れれば、宗像がナマエに強くしがみ付いた。

「は、ぅ……ん、……っあ、ぁ……っ」

先走りが多いのか、ぐちゅりと淫靡な音が響く。
天を仰いで泣く欲望を宥めるように撫でてやれば、宗像の唇から漏れる声が一層大きくなった。
本当に、艶のある綺麗な声だ。
こんなふうに、本能に忠実な行為の最中でも、この人は美しいままなのか。
ナマエは上体を屈め、濡れた欲望の先端に口付けた。

「ひぅ……っ、ん……ぁ……」

先ほどのお返しとばかりに、舌先で擽り、舐め上げ、唇で吸い付く。
咥えることなく先端を刺激するだけだったが、宗像には充分だったらしい。

「……あ、ああっ、や、……ナマエ、だめ、……だめです、……あ、ぅ……っ」

鈴口に舌を差し入れ、添えていた右手で裏筋をなぞった瞬間、欲望は白く爆ぜた。
ナマエはタイミングを合わせて先端を口の中に含み、吐き出される白濁を迎え入れた。

「……あ、あぁ………んぅ……」

あまりにも量が多かったため、途中からは飲み込みながら、それでも最後の一滴まで搾り取るように吸い尽くす。

「……濃い、ですね。溜まってました?」

デリカシーがないのは分かっていたが、そう聞きたくもなるような濃度と量だった。
放心していた宗像が問いの意味に気付いて一気に頬を染め上げ、それを隠そうとナマエに抱きつく。

「……その、一人でそういうことをしようとすると……君の姿が、脳裏に浮かんで………その、勝手にそんなことをして、許されるのか、と……」

なんだろう、この可愛い生き物は。
ナマエは、苦かったはずの口内が一気に甘くなるのを感じ、ぎゅうぎゅうと抱きついてくる宗像を優しく抱き締め返した。
その耳元に、そっと声を落とす。

「……きてください、しつちょ、」

ごくりと喉を鳴らす音が、鮮明に聞き取れた。




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