その祝福があらんことを[2]
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シュテルンビルト市民に知らない人はいない、というほどの有名人。
特に女性ファンが多い。
そんなバーニィだから、彼女はいない設定になっている。

ヒーローたちは皆私の存在を知っているが、当然公にはされていない。
だから誰彼構わず、バーナビー・ブルックスJr.の恋人ですと言う訳にはいかないのだ。

参ったなあ、と苦笑い。
職場でなければ、貴方なんかに興味はないと吐き捨てることも出来るのだが。
できれば穏便に済ませたいと、思案していると。
急に手首を掴まれた。

「明日なら大丈夫ですか?」

なぜそこまで自信たっぷりに聞けるのか、全くもって不思議だ。

「いえ、あの…」

困惑を通り越して、そろそろ苛立ちが募り始めたその時。
突然横から伸びてきた手が、男の手首を掴んで私から引き離した。

「気安く触らないで頂けますか」

頭上から降ってきた、冷え切った声。
驚いて顔を上げて、背筋を冷や汗が伝った。

そこにいたのは、怒りを通り越して無表情になったバーニィ。
冷ややかなブルーの瞳が、男を睨みつけていた。

男が唖然とした顔で、不意に登場したヒーローを見つめる。

「な、な…」

驚いて言葉もないらしい。

「今後一切、僕の彼女に関わらないで下さい」

一言そう言い捨てて、バーニィは私の手首を掴むと出入り口に向かってずんずん歩き出した。

無言のまま外に出れば、正面に横付けされた赤い車。
見慣れたバーニィの私用車。

助手席に無理矢理放り込まれて、バーニィは乱暴にドアを閉めた。
運転席側に回ったバーニィが、アクセルを踏み込んで一路彼の自宅へ。
これは相当ご立腹らしいと、その横顔を見て思う。

バーニィは多少機嫌が悪い時は、ぶつぶつと文句を言う。
それが、悪くなりすぎると全く喋らなくなる。
眉間に寄せられた皺が、最悪な気分であることを物語っていた。

この場合、何が問題か。
それは私に非がないことだ。
私が悪かったのならいくらでも謝る。
が、この場合私が謝っても意味がない。
多分バーニィは、あの男に怒っている訳でもない。
嫉妬や独占欲という負の感情はきっと初めてのはずで、制御しきれずに苛立っているのだろう。
こういう時は何と言えばいいのか。
頭が冷えるまで待つべきか。

そんなことを考えているうちに、車はバーニィの自宅に着いていた。


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