その祝福があらんことを[1]
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R-18





「あの、ミョウジさん!」

背後から掛けられた声に、今日は厄日かと思った。


どうしてこう、急いでいる時に限って用事が飛び込んでくるのだろうか。
ちらりと腕時計を確認する。

18時40分。
もう予定より1時間以上オーバーしている。
本来なら、今頃はバーニィの家でお酒を飲んでいるはずだったのに。

美味しいワインがあるので今夜どうですか、と誘われたのが今朝のこと。
仕事は溜まっていなかったから、定時に帰れると思っていたのに。
帰る間際に斉藤さんに掴まったのが悪かった。
しかし、今斉藤さんと2人で開発を進めている特殊シールドのことで話があると言われれば、断る術はない。

仕事で遅くなるとバーニィにメールを入れてから、もう1時間半。
仕事に理解はある子だから、怒ってることはないと思うけど。
早く行かないと、あの甘えたさんは拗ねてしまう。

今もしも外を歩いていたら、名前を呼ばれたことに気づかなかった振りもできただろう。
だが残念なことに、ここはアポロンメディアのエントランスロビー。
職場ではそうもいかないと、立ち止まって振り返った。

追いかけて来たらしい1人の男が、私を見つめて立っていて。
見覚えがあるような、ないような。
少なくとも親しくはない男だ。

「突然すみません。俺は人事部のロビン・フォルセットっていいます」

そう自己紹介された。
ということは初対面なのだろう。
人事部、という単語に首を傾げた。
人事部の人間が、開発部の私に何の用だ。

「今、時間いいですか?」

素直に答えればノーだ。
だが仕事に私情を挟むつもりはない。

「ええ、大丈夫です」

ちょっと頑張って笑顔を作る。

「よかった。あの、俺、前から貴女のこといいなって思ってて」

突然の、告白。
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだ。

「よかったら今から食事に行きませんか?」

つまるところ、これは仕事の話ではない。

「すみません、今日は先約が」

全く、職場で告白するなんてどういう神経だ。

「そうなんですか、いつなら空いてますか?」

貴方と食事に行く気はないと言ったつもりだったが、遠回しすぎて伝わらなかったらしい。
それともこの男が馬鹿なのか。
どうしたものかと溜息を吐いた。

素直に、付き合っている人がいると言ってしまうのが手っ取り早いのは十分承知している。
だが、私の場合それは出来ないのだ。
なにせ、相手があのヒーロー、バーナビー・ブルックスJr.なのだから。


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