いつの日もこの唄を[1]
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ソファの上に2人。
脚を開いたバーニィの間に私が座っている。
バーニィの腕は私の腰に回されて、ぎゅう、と抱きしめられている。

最近分かったことだが、どうやらバーニィはこの態勢が気に入っているらしい。
家にいるときは、気がつけばいつもこうなっている。
お互いその状態のまま話したり、本を読んだり、コーヒーを飲んだり。
たまに邪魔じゃない、と聞いても、バーニィは否定して腕の力を強くする。
片時も離さない、とばかりに。

別に、それが嫌な訳じゃない。
ただ、トイレに行こうとするだけでひどく寂しそうな顔をするのはちょっと勘弁してほしい。
捨てられた仔犬みたいな目をされては、のんびり用を足すことも出来ない。

つまるところ、バーニィは物凄く甘えたがりだ。
その容姿と世間の評判からは、想像もつかないくらいの。
淋しがり屋で、まるで子どもみたいで。

だけど、甘えたがりの割に甘え方を知らない。
それはきっと、甘えるという経験を幼少期にしてこなかったから。
だから分からないのだ。
どうやって、どこまで甘えていいのか。
拒絶が怖くて、素直になれない。
ありのままの自分を出せなくて、取り繕って。
きっと本質的に、バーニィと私は似ているのだろう。

違いは、それでも心の奥底で人を求めたか否か。
バーニィは、どこかでずっと求めていた。
私はそれをやめた。
親を殺されたのと、親に自ら死なれたその違いが出たのだろう。

バーニィは今、少しずつ手探りで自分の表わし方を見つけようとしている。
私には、甘えられるようになってきた。
かなり、恐る恐るではあるけれども。


昨日も電話で

「明日どこか出掛ける?」

と尋ねれば

「…ナマエの家で、2人でのんびりしたいんですけど、駄目ですか?」

なんて、可愛らしいお願いをされた。
もちろん二つ返事で了承したから、今こうして過ごしている。

朝からずっとこんなかんじだ。
喪失を知っているからこそ、バーニィは極端に手放すことを恐れる。
束縛や独占欲、過剰とも言える甘え方。
それらを嫌だと思わない辺り、私はずいぶん彼に参っているのだろう。

でも流石にそろそろ離してもらわないと、いい加減お腹もすいてきた。

「バーニィ、ちょっと離して。お昼ご飯作ってくるから」

ぽんぽんとあやすように、お腹の前で組まれた手を叩いてみる。

「嫌です」

返ってきたのは即答だった。


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