拙い愛に包まれて[3]
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やっぱり不器用なんだなあと、思わず微笑んでしまった。

何でも器用にこなせてしまいそうに見えるのに。
スマートで、格好よくて。
シュテルンビルト中の人間が彼を知っているほどの有名人で。
それなのに、実際はこんなに緊張して。
無口になるほど参っているらしい。
これは、こっちから話題を提供するしかないのだろう。

実は私自身、年下と付き合うのは初めてなのだ。
しかも、これまでの男とは格段にレベルが違う。
ルックス、知名度、経済力は上の上。
だが女性経験や生活力は皆無というアンバランスさ。
こっちだって緊張するんだけどなと、心の中で呟いた。

「そういえば見たよ、今朝のインタビュー」

こういう所で仕事の話は不本意だが、まずはその辺りから攻めるのが良さそうだ。

「ああ、見てくれたんですか」

今朝、テレビの取材でインタビューに答えていたバーニィを自宅で見た話から。

「うん、胡散臭い笑顔振り撒いてたね」

まあ、全市民はあれを本当の姿だと信じきっているのだろうけど。

「ひどい言われようですね」

バーニィがくすくすと、今日初めての無邪気な笑みを見せて。
いつの間にかそんな顔も出来るようになったんだと、嬉しくなった。

初めて会った頃は、あんなに刺々しいオーラを振り撒いていたのに。
人は変わるものだ。
ちゃんと笑ったり拗ねてみせたり、そんな人間らしい表情を見せてくれるようになった。

やがて料理が運ばれてきて。
バーニィが連れて来てくれただけあって、美味しかった。


「今日はありがとう、楽しかったよ」

店を出て夜道を歩きながら、隣りを歩くバーニィを見上げる。
ちゃんと車道側を歩いてくれたりと、彼は基本的に紳士だ。
物凄く、不器用だけれども。

「いえ、あの、ナマエ。今日はすみませんでした」

突然しどろもどろに謝られて、何のことかと首を捻った。
バーニィは、なんだか落ち込んだ表情をしていて。
立ち止まって、彼に向き合った。

こういう時、うやむやにして流すのは楽だけど。
彼とはちゃんと、話をしていきたいと思う。

「…僕、好きな人と出掛けるとか、そういうのは初めてで。どうしていいのか分からなくて。…その、ナマエの服装もいつもと違って、ちゃんと褒めたいのに、上手く話せなくて…」

そう言って肩を落とす、その姿に。
胸がきゅう、と詰まった。


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