拙い愛に包まれて[2]待ち合わせ場所に着くと、既にそこにはバーニィの姿があった。
全く目立つ男だ。
遅い時間帯で辺りが暗いからいいものの、これが真っ昼間だったら凄い騒ぎになっただろう。
いつもの赤いライダースジャケットにワークパンツとブーツ。
そんな派手な格好をしていなくても、十分に人目を引く容姿をしているというのに。
バーニィは私の姿を見つけて一瞬目を見開いたあと、嬉しそうに笑った。
ひとまず服装は合格ってところだろうか。
「お待たせ、バーニィ」
手を振って、最後の何歩分かを駆け寄った。
「仕事お疲れ様。ごめんね、待たせちゃった?」
いつ見ても綺麗な顔立ちだな、なんて思いながら見上げれば。
バーニィは少し頬を染めて笑っていた。
「いえ、僕も今来たところでしたよ。…行きましょうか」
連れて来られたのは、予想通りのフレンチレストラン。
しかも店の奥に設けられた、VIP専用の個室。
さすがにそれは初体験で驚いた。
なるほど、確かにこれなら周囲を気にせず話が出来る。
顔が割れているバーニィにはありがたい店だろう。
聞けば、オーナーと知り合いなのだと言われた。
「ナマエ、何か苦手なお酒や料理はありますか?」
メニューを手にしたバーニィに聞かれて、首を横に振った。
私にはあまり好き嫌いがない。
そんな贅沢を言ってたら生きられない環境で育った、というのが理由だろうが。
こっちの方がより好き、みたいな好みは存在するが、これは食べられない、というものはない。
飲み物もそれに然りだ。
「分かりました。では、僕に任せていただいても?」
そう言って微笑むバーニィは、やっぱり格好いい。
ウェイターにヴィンテージもののワインをいくつかと、コースを注文する彼をぼんやりと眺めた。
それからワインが運ばれてくるまで、バーニィは何度か口を開きかけたが結局何も言わないまま。
注がれたロゼワイン。
「乾杯」
グラスを手に、お互い微笑み合った。
甘すぎない、好みの風味だ。
ゆっくりグラスを置いたバーニィを、こっそり観察する。
今日はやけに無口だ。
彼を寡黙だと思っている人は多いが、間違いなくそれは誤解だ。
いつも隣りにいる虎徹さんと比較すればそう見えるだけであって、バーニィは無口な方ではない。
人並みに、普通に喋る。
そんな彼が無口になるのは、機嫌がひどく悪い時と緊張している時。
今は後者だろう。
やっぱり慣れないことをしていると緊張するのだろうか。
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