拙い愛に包まれて[1]
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今夜、一緒に食事に行きませんか。


そんなお誘いの電話があったのが、今から6時間ほど前のこと。
私は今、待ち合わせ場所に向かってゴールドステージを歩いている。

時刻は19時前。
ほんの少し肌寒い風が吹いていた。

オフの日に誘われたということは、支度する時間が十分にあるということで。
さすがにいつものパンツスーツじゃまずいだろうと、服装選びから始まった。
カジュアルか、フォーマルか。
バーニィはどこに行くか教えてくれなかったから、まずそこから悩んだ。
どんな所に連れて行ってくれるのか、バーニィが考えていそうなことに思いを巡らせる。

今回は多分、俗に言う初デートというやつだ。
その場のノリや流れで一緒にご飯を食べたことはあるが、こうしてお誘いを受けて出掛けるのは初めてで。
バーニィなら、どんな所がいいと考えるだろう。

そもそも彼は、デートなんて不慣れなはずだ。
むしろ初めてだろうか。
仕事上の付き合いやらパーティの延長で、女性と食事をしたことくらいはあるだろうが。
そうなると、あまり常識的で一般的なケースには当て嵌めにくい。
その上、バーニィは馬鹿みたいに高給取りで。
家族は上流階級だったと聞いているし、その後彼を育てた社長も多分に漏れずだ。
ここはやっぱり、高級レストランのフルコースが来ると考えるのが妥当だろう。

フォーマルに、でも堅すぎず、といったところか。
そう考え、結局タイトなスカートとブラウス、曲線が綺麗なジャケットを羽織ってきた。
足元は、いつもより高めのヒール。
髪は下ろして、毛先を少し巻いてみた。

バーニィは、気に入ってくれるだろうか。
歩きながらそんなことを考えて、その乙女チックな思考に苦笑した。
今まで誰かと付き合っていて、相手のために服を選んだことなどなかったのに。
今は、バーニィが好みそうな服を探してしまう自分がいる。

「…恋だねえ」

小さな独り言を1つ。
この歳になって、こんな経験をするなんて思ってもみなかった。

いつもよりちゃんと化粧をして、なんだかワクワクした心を抱えて。
でも、そんなのも悪くないと、そう思うから。
軽い足取りで街を歩いた。


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