幸せは日常に溢れてる[2]
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「バーニィ」

呼ばれて、振り返って。
オフィスの入口に見つけた姿に、頬が緩む。

「待ってましたよ、ナマエ」

昼食休憩の前、仕事がちょうど一段落したところだった。

「コーヒーでも飲みますか?インスタントしかないですけど」

ナマエがいれるコーヒーみたいに美味しくはないのだが、職場なんてそんなものだ。

「んー、バーニィ今忙しい?」

そう、首を傾げられて。
可愛いと口走りそうになって、慌てて答えを用意した。

「いえ、そんなことはないですけど」

するとナマエは、にっこり笑った。

「じゃあ、ちょっと早いけどランチ行かない?」

美味しいお店知ってるからと、そう誘われて。
もう即座に頷いていた。

「行きましょう」

ナマエとランチ、実は初めてだ。

「ね!話もそこで出来るし」

ナマエはそう言って、手に持ったクリアファイルを揺らす。
揃ってオフィスを後にした。

ランチに行くだけなのに、それがナマエと一緒だというだけでワクワクして。
子どもみたいに喜ぶ自分が、少し恥ずかしかった。

連れて来られた店はこぢんまりとしていて、個室とまでは言わないもののテーブルごとに仕切られていた。
顔を出してヒーローをやっている僕を気遣かってくれたのだろう。
そういうさりげない優しさが嬉しくて。

僕はオススメだというオムライスを、ナマエはドリアを頼んだ。
ランチなのでサラダと飲み物がセットになっているらしい。

「バーニィとランチって初めてだね」

僕と同じことを、考えてくれていた。
それが何だか擽ったくて笑った。
不思議そうにナマエが首を傾げる。

「すみません。ただ、同じことを考えているな、と」

正直に言えば、ナマエは微笑む。

「バーニィ、よく笑うようになったね」

静かに、嬉しそうに言われて、妙に照れ臭くなった。


多分、この2週間で1番の変化はそれだ。

毎日が、今までよりもずっと楽しくなった。
お互い忙しい身だから一緒にいられる時間はそんなに多くないが、それでも毎日交わされる他愛のないやり取りや。
たまに送られてくるメールだったり、周りからの冷やかしさえもが僕を幸せにしてくれる。
今までよりも、色々なものが鮮やかに綺麗に見えて。
その度に、ふとした瞬間にいつも、ナマエが好きだと思う。

「貴女のおかげです」

素直に、そう告げれば。

「光栄です、バニーちゃん」

そう茶化されて。
でも僕の抗議の声は、運ばれてきたオムライスのいい匂いに遮られてしまった。
そんな僕を見て、ナマエがおかしそうに笑っていたから。
だから、もうなんでもよかった。

ただ、2人でいれば幸せだと思った。




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