甘く蕩けて、その後は[2]
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「片付けはやっておくから、風呂入ってきていいぞ」

買ってきたサラダやハム、チーズなどを一通り食べ終えたところで。
貴方は何の衒いもなくそう言って、パックや使ったフォークをまとめ始めた。

「え、いいよ、私やるよ」

片付けくらい、と慌てて手を伸ばしても、その手は呆気なく貴方に捕らえられてしまって。
指先に、気障なキスが降ってきた。
びっくりして固まった私を見て、貴方はニヤリと目を細めると。

「なんだ。先に風呂がいいかと思ったんだが、違うのか?」

さっきまでとは違う、艶を含んだ声。
琥珀色の瞳が、じっと私を見ていた。

「…っ、お、お風呂、入ってくる!」

慌てて手を引きながらそう宣言すれば、貴方は可笑しそうに喉を鳴らして。
いい子だ、と笑った。
子ども扱いをされているようで、でもちゃんと女として見てくれていることも分かる。
結局これは、甘やかされている、ということなのだろう。

いつも、そうだった。

疲れている時、落ち込んだ時、悲しい時。
貴方は何も言わず、何も聞かず。
まるで当たり前とばかりに、私を甘やかしてくれた。


ラバトリーで服を脱いでいると、コンコン、と引き戸がノックされた。

「え、なに?どうかした?」

鏡に映る自分は下着姿で、ドア越しだというのに妙な気恥ずかしさが込み上げる。
そのことを、分かっているのかいないのか。

「提案」

ドアの向こうで、貴方の愉しげな声がした。

「疲れてるんだろ?髪、洗ってやろうか?」

貴方はいつも優しくて、私を甘やかしてくれて。
本当に本当に、私には勿体ないような素敵な恋人だけれども。
流石の私だって、分かっている。

「一人で大丈夫!」

それは、下心満載の提案だ、と。
だから全力で拒否したら、貴方はまた可笑しそうに笑って。

「別に遠慮なんてしなくていいんだぜ?」

そう言って、ドアをコツコツと何度も叩いた。
ちらりと視線を送った先にある鍵は、残念ながら掛かっていなくて。
つまり貴方は、いつでもこのドアを開けられる。

「………髪、だけだからね?」

貴方もそれを知っている。

「今ならオプションで身体もセットだな」

本当は、嫌じゃないってことも。
本当は、心のどこかで期待してるってことも。

「……変なこと、しちゃダメだからね」

最終的に、私が折れるってことも。
全部全部、知っている。

「それは、出来ねえ約束かもな」

ドアを開けた貴方は、私の姿を見て目を細めた。
真正面から対峙してしまい、一層恥ずかしくなる。
慌てて壁にはめ込まれた照明のスイッチに手を伸ばしたけれど、やっぱりその手は呆気なく貴方に掴まれてしまって。

「変なこと、も、本当は期待してるんだろ?」

ぐ、と抱き寄せられた身体。
素肌の背中に感じる貴方の手と、首筋に掛かる貴方の髪。
耳元に寄せられた唇から掠れた声で紡がれた言葉に、ざわり、と背筋が震えた。

言葉を失くした私と、それ以上は何も言わない貴方。
数秒間続いた沈黙を破ったのは、貴方が吹き出す音だった。

「冗談だ、悪かった」

なおも私を抱き締めたまま、貴方はそう言って。
大きな手が、私の髪をくしゃりと撫でた。


「今日もよく頑張ったな、お疲れさん」


耳元に落とされた言葉は、今度は優しく穏やかに。
蟀谷に触れた唇から、じわりと沁みて溶け込んだ。




甘く蕩けて、その後は
- きっとまた、頑張れるから -




あとがき


みいちゃんへ
お待たせしましたにゃー!!(笑)

まずは、29万HITの方から。左之さんに甘やかされるお話、でした。設定等々はお任せして頂いていたので、現パロで書いてみました。といっても、みいちゃんがどんなお仕事をされているのか分からなかったので、全然当て嵌らなかったらごめんなさい(>_<)
意識したのは、手と声ですねww 声の方は、脳内で素敵なボイスに変換して頂ければ幸いです。
きっと左之さんは、さりげなく、でもデロデロに甘やかしてくれる人なのかな、と。寒い冬の金曜日。みいちゃんに少しでも幸せをお届けすることが出来ていれば嬉しいです。

素敵なリクエストをありがとうございました(^^)









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