溶けて流れて、[2]
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「はじめ、ちょ、待って!電気、」
「先刻、浴室の電気はついていたように思うが」

腰に手を回して引き寄せ、尚も何か言い募ろうとする唇を塞いだ。
触れては離れてを繰り返し、唇を何度も擦り合わせる。
そのまま徐々に後退し、ベッドに深く腰掛けた。

「わ……っ、なに?」

ナマエの戸惑いを他所に彼女の身体を反転させ、背後から抱き締める形で俺の脚の間に座らせた。
少し首を曲げれば、丁度目の前にナマエの項が見える。
髪の隙間から覗く小振りな耳に唇を寄せ、呼気と共に言葉を吹き掛けた。

「仕返しだ。無論、覚悟は出来ているのだろう?」

ナマエが着ている大きめのカットソーの裾から、手を滑り込ませた。
華奢な手が俺の動きを抑え込もうと抵抗を見せるが、それに構わず肌の感触を楽しむ。
そのまま胸元まで手を這わせれば、眠る時はそこに下着を付けないナマエの習慣が幸いしてすぐさま膨らみに直接触れることが出来た。

「や、はじめ…っ」

弾力のある二つの丸みを両手で揉みしだき、時折指先で息づいた先端を弾く。
腕の中で、ナマエが身体を捩った。
先刻彼女にされたことを、忠実に再現していく。
舌を出して耳殻を嬲れば、ナマエの肩が大きく震えた。
指先で胸の頂を摘めば、その唇から甲高い嬌声が飛び出す。

「ああ……っ、や、はじ…めえ……!」

指の腹で先端を擦り、時折爪を立て、胸全体を包み込む。
同時に耳や首筋に唇を寄せ、舌を這わせた。
ナマエは何故か、どこもかしこも甘い匂いがする。
それを堪能したくて、耳の後ろに鼻先を押し付けた。

「…あんたは、いい匂いがするな」

耳の穴に直接言葉を落とし込めば、ナマエが逃れようと顔を背ける。
それが気に入らず、左手を上げて顎を掴んだ。
そのまま向きを変えさせ、目の前に迫った唇に噛み付く。
舌を差し入れて口内を蹂躙すれば、くぐもった喘ぎ声が漏れ聞こえた。
味蕾を擦りつけ、上顎を擽り、歯列をなぞる。
唾液を絡めれば、卑猥な水音が響いた。

左手を再び胸元に戻し、恐らく赤く色付いているのであろう頂を摘んで引っ張る。

「んん…っ、ぅん……!」

ナマエの喘ぎ声が、俺の口内に消えた。
唇を離せば、溶け切った双眸が俺を見つめてくる。
漆黒の瞳は薄い膜を張り、揺らめいていた。
物言いたげな視線。
その意味を、俺は正しく理解している。
そしてあの時のナマエも、正しく理解していただろう。

「何だ、」

生憎と、目の前に鏡はない。
この次は全面鏡の前で行為に及ぼうと決心しながら、胸の先端を強く弾いた。

「ひあああっ、」

ナマエの身体が大きく仰け反り、俺の胸に背中を押し付けてくる。
その重みを受け留めながら、昂った欲望をパンツ越しに華奢な腰へと押し付けた。

だが、まだ与えてやるつもりはない。
俺は散々焦らされたのだ。
ナマエだけが容易に快楽を昇り詰めるなど、許し難いことだ。

ナマエが穿いている七分丈のパンツの上から、太腿に手を添えた。
そのまま足の付け根へと這わせ、やがて股の間に辿り着く。
衣服の上から秘所をなぞってやれば、ナマエはもどかしげに腰を揺らした。

そうだ、それでいい。
そうやってもっと、俺に翻弄されればよい。

「……ん、……は、ぁ……」

ナマエの唇から、切なげな声が漏れる。
微弱な刺激を必死で拾おうとしているのだろう。
腰が揺らめき、髪は悩ましげに舞った。

「どうして欲しい」

全て、言わせてやる。
望むこと、欲しいもの。
全てを曝け出せ。
俺が言わされた台詞を、同じように言ってみせろ。

「あ、あ……、も、……直接、さわっ……て、」

己でも、唇の端が吊り上がったのが分かった。




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