幸せは日常に溢れてる[1]
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「あ、おはよ、バーニィ」

朝、出社したアポロンメディアの廊下で、偶然彼女に会った。

「おはようございます、ナマエ」

朝から、綺麗な笑みを見せてくれて。
それだけで胸は高鳴った。

「バーニィ、ちゃんと寝た?なんだか眠そう」

相変わらず、鋭い洞察力だ。
何一つごまかせる気がしないけど、今日は大丈夫な振り。

「そうですか?問題ありませんよ」

寝不足の理由が、実はかなり恥ずかしいから黙っておいた。

「そ?ならいいんだけど。あ、そうだ。あとでオフィスに寄るね、見てほしい資料があるんだ」

そう言って、楽しそうな笑み。
どうやらまた面白いものでも開発したらしい。

「分かりました。午前中はずっとオフィスにいる予定なので、お待ちしています」

今日のスケジュールを伝えれば、了解と返される。

「じゃあまたあとで」

ひらり、と手を振って。
彼女は歩き去った。


僕たちが付き合い始めてから、今日で2週間。
その間に、僕の日常はじわりじわりと変化を遂げた。

まずは、彼女をナマエ、と呼び捨てるようになった。
2回目の告白の時、勢いあまって"さん"を付け忘れたことを彼女は怒っていなくて。
むしろその方がいいと言ってくれたから。
ナマエ、と呼ぶことにした。

ナマエもあの日から、バーニィと呼んでくれるようになった。
今でもふざける時はバニーちゃん、なんて言うけど。
基本的にはバーニィ、とひどく柔らかな声音で呼ばれる。
サバサバしていて割と淡泊そうで、少しだけ凶暴な普段のナマエからは想像もできないような、甘い声。
それがとても、とても嬉しくて。
いつもと違う音、ナマエしか呼ばない名前。
特別だと言われてる気がして、呼ばれる度に心臓が跳ねた。

ナマエは、仕事中もそう呼んだ。
てっきり職場では交際を隠したがるのかと思っていたから驚いた。
ナマエはやたらとそれを匂わすような言動はとらないものの、皆の前でも普通にバーニィと呼んだ。
隠す気なんてさらさらなくて、むしろナマエは僕のものなんだと言い触らしたくなっていた僕にとって、それは嬉しかった。

だから付き合った翌日には、ヒーローの誰もがその事実を知ることとなった。
よかったな、と笑ってくれた虎徹さんを思い出す。
彼が背中を押してくれてよかったと、心からそう思えた。


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