03

ルルさんに挨拶をし終えると、先生たちは今日はもう遅いから寮で休めと指示し、彼女は一足先に寮へ行ったが私は用があるからと彼女に着いて行かずに大ホールに残った。
そして、大ホールにいる2人の先生たちをじっ見つめる。


――どうして彼女のサポート役を私に任せたんですか?


視線の含みに気づいたのか、2人の先生はため息をはいた。


「どうしてサポート役を任せたのか聞きたい、といった顔ですわね。…ルミア、あなたはいつまで人間から逃げているつもりでして?」

「……それ、は………」

「そなたもあと半年とすればあの娘と同様、16になる。異種族婚の者が16になったらどうするかは知っておろう?」


先生たちは呆れたような、でも少し怒っているような…そんな表情で私を見る。


「あなたがいつまでも周りを怖がって拒絶しようとも、選択を迫られる時は必ず来ましてよ」

「っ、……わかって、ます。でも、駄目なんです……怖いんです…………」


私は手に持つ鏡を、ぎゅっと力を込めて抱き抱えた。
私は人間が怖い…。
運命の選択をするのがとても重く感じて、すごく怖くて…逃げたくなる。
だけど……それ以上に、誰かを傷付けてしまう自分が怖くて堪らない。


「まあ、あなたにしては今日は頑張ったほうなのかしら?」


ふう、と吐息をしながらヴァニア先生は私が抱えている鏡に視線を移した。


「ここに入学してからというもの、相も変わらず滅多なことでは言葉を出さずにおったからの」

「純粋な人間に言葉を聞かせたのは久方ぶりなのではなくって?」

「体質もあるのだろうが、そなたの場合は単に人見知りが激しいだけのような気もせんではない。もう少し歩み寄る努力をしてみよ、と前から散々申しておろう。折角の機会じゃ、しっかり精進するのじゃぞ」


なんだか、耳が痛くなってきた……。
だけど…ようやく理解できた。
先生たちが私に彼女のサポート役に指名した理由……。
きっかけを、与えてくれたんだと思う。

私がちゃんと自分と向き合えるように。
怖がらずに、言葉を交わせられるように。
人間を信じられるように。

先生たちは私の事を考えてやってくれたんだろうな……。
そう思ったら、なんだか胸が暖かくなった気がして、笑みが零れた。


「…ありがとうございます、イヴァン先生、ヴァニア先生」


私が頭を下げてお礼をすると2人は一瞬キョトンとして、顔を見合わせる。


「私、もう少しだけ、頑張ろうと思います。……ルルさんなら、信じられる気がしました。………だから、ありがとうございます」

「ふふふ……そう、応援してましてよ?」

「今の言葉、しかと聞いたぞ。自分で言った言葉を忘れるでないぞ」


私はイヴァン先生の言葉に頷いてから、再度頭を下げてから、寮に戻った。



←prevnext→


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -