07

ラギくんがルルさんのマカロンをすべて食べてしまった事件の翌日。
ラギくんはルルさんにどのタイミングでお礼の品を渡せばいいのか悩んでいた。

彼女へのお礼は、2人で悩みながら考えて……甘いお菓子の詰め合わせになった。
ラギくんが、私にルルさんはどーゆー物が好きなんだ?キラキラ光る石じゃなきゃ駄目か??と戸惑っていたので、私は前に一緒に寮へ帰った時に話したことを頼りに言ったのだ。

ルルさんは、甘いお菓子が好きだって言っていたのだと。

そして私たちの手持ちのお菓子をかき集め、かわいらしい袋でラッピングしてお礼の品は出来上がった………のだけれど。


「朝はさすがにバタバタしてるし、まずいよな?」

「うん……たぶ、ん…」

「昼なんて、あいついつ食堂に来るかわかんねーから却下だろ?」

「あ……特別授業………」

「午後も何処に行くかわかんねーし……」

「……まだ編入してきたばかり、だから………色々見て周りたい……のかも……?」

「…………」

「…………」

「…………どうしたらいいんだ?」

「えっと…………夕食の時に………頑張る?」

「やっぱ、それしかねーよな」

「………た、ぶん。………えっと、……頑張ろ?」

「はあ…、そうだな……」



というのを昨日して、夕食の時に頃合いを計ってルルさんに渡すってことになったけど………。


「タイミングがわかんねー」

「えっと……いっそのこと……タイミング計らなくても……いいんじゃ……?」

「いや!なんか気まずいじゃねーか。昨日八つ当たりしちまったばっかだしよ、同席してるのだって昨日あの時にいたよな?」

「う、うん……」

「…………」

「…………」


意外とナイーブなラギくんは昨日の八つ当たりに対して反省しているみたいだけど…中々上手くお礼を言い出せないでいる。
うーん、……困った……な……。
彼女たちは話に盛り上がっているみたいで、会話に花を咲かせている、が……


「―――それでねアミィ、私が中庭にいたら、ビラールって留学生に会ったの!」

「そうだったの。ビラールさんは、ファランバルドの王子様なのよ」

「お、王子様!?」


『ビラール』と『王子様』いう単語にラギくんは俯き顔をあげて、今度は不機嫌そうな顔をする。


「わあっ、すごいすごい!本物の王子様なんて初めて見た!すごく包容力がある人だったし、王族って言われても納得しちゃう!」

「王子だの何だのなんて関係ねーだろ。ビラールはビラールだ」


ラギくんはルルさんたちの所に歩を進めながら言うと、ルルさんは驚いたようにこちらを振り返る。


「ラギ!ルミアも!」

「……なんだよ、妙な顔して。俺らがここにいちゃ悪いのかよ」

「そ、そうじゃないの!ただ、びっくりしてただけ。ほら、昨日は私がかなり失礼なこと言っちゃったから、ラギも怒ってると思って」


そう言って彼女は申し訳なさそうに目を伏せるがラギくんはそれを気にせずにフン、と鼻を鳴らす。


「昨日のことはもういい。けど、お前らが妙な話してるから、単に文句を言いたくなっただけだ」

「妙な話って、ビラールのこと?」


ルルさんは首を傾げながら聞くと彼は、ああ…、と頷く。


「王族だの王子だの、別にあいつがそう呼んでくれって頼んだわけじゃねーだろ?ビラールは王子扱いされたくねーって言ってるからな。お前も覚えとけ」

「そうなんだ……。教えてくれてありがとう!次から気をつけるね」


ラギくんは言いたい事をいってすっきりした様子だけど………本題、忘れてないよね……?


「でも、ラギってビラールのこと詳しいのね。お友達なの?」

「…………友達っつーのか、アレは」


ラギくんは私に目配せをするが苦笑を浮かべるしかなかった。
それに不思議がったルルさんは、違うの?と疑問符を浮かべる。


「あ、あの、ルル。ラギさんとビラールさんは、ルームメイトなの……」

「俺から見りゃただの変人だけどな。……まあどんなに変なヤツだとしても、同じ生徒であることに変わりねーし?」


………深い言葉だけど……、なんで『変なヤツだとしても』の部分でルルさんを見たんだろう……?
ルルさんもそれに気付いたらしく、ラギくんに問い詰めるがはぐらかされる。
………とりあえず、本題に入らせようかな……。


「……ラギくん、袋……」

「っ、わーてる!………ほらこれ。やる!」

「えっ?」


私が声をかけると、ラギくんは肩を跳ねさせ、ずいっとルルさんの前に袋を差し出す。


「……昨日、俺、お前のマカロン全部食っちまっただろ。その分だ。まあ、間が悪かったんだ。変身すると異常に腹減っちまうし、全部食っちまったんだが……か、借りを作ったままなのは、俺の方が気持ちわりーしな」

「えーと……」


ラギくんは照れ隠しのように、言葉を重ねていくけど…………段々と早口になっているの……気付いてる、かな……?
ひっそり見守っていると、ルルさんの友達の……確かアミィさん?と目が合い、お互い静かに笑い合う。
確か、こういうことを青春っていうんだっけ……?
ほほえましい、なあ……。
ニコニコと見ていると、ラギくんは足早に食堂から出て行ってしまった。

………あ、置いていかれた……?

私とアミィさんは顔を見合わて再び笑うとルルさんが、え?何々?何のお話?と聞いてくる。


「ふふっ、なんでもないわ。………ね、ルミアさん…?」

「!……う、ん………アミィ…さん……」

「?……あれ、2人っていつの間にお友達になってたの?」

「……いつ…………?」

「今、じゃないかしら?……嫌かしらルミアさん?」

「っ、ううん……違う……よ……。………嬉しい、です……アミィさん………!」


その後、ルルさんとアミィさんと3人で食べた夕食は昨日よりも美味しく感じられた。



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