「 2 」

 導かれるまま、ナルトは彼女へ歩みよる。
 女だと分かってからつねに1メートル以上は近寄らなかった彼が、この時初めて近づいた。
 彼の足が、彼女から1メートル以内の領域に踏み入れる。
 躊躇するように。
 その戸惑いを看破した彼女。「おれに近寄れないのか? 寂しいな、一緒に寝た仲じゃねぇか」
 ナルトの顔に焦りの表情が浮かぶ。「違う、ただ、徹夜続きだったおれがお前ん家で寝ただけだ」
「何焦ってんだよ。はっはっは、可愛い奴だ」

 そう言って、彼女は、ナルトの腕を掴み、勢いよく引いた。
「うわ、」
 不意打ちのまま、彼女のもとへ引きこまれる彼。
 ナルトと彼の足もとに積まれていた花束やプレゼントの箱から中身が散らばる。チョコレートやクッキーなど、彼女の好きな甘いお菓子。舞う花びら。
 抱き合う形。
 彼と彼女の身体がぴったりとくっつく。
 彼女の腕の中にある、少年の身体。
 お互いの肩口に、お互いの吐息を感じる。
 ナルトの吐息を肩に感じる彼女と、彼女の吐息を首筋に感じるナルト。肩には彼女の乳房の柔らかな感触がある。
 女だと分かってから距離を置いていたのに、今突然一気にその距離が無くなり、ナルトは頭が熱くなった。

「ねえ、うずまき、」
 すぐ耳元で彼女の声がする。男だと思っていたときと同じ、低くて甘くて優しくて心地よい声。
 そして、蠱惑的で性的な声。
「おれが見えないだろう? これで、おれが女だって、くだらないことを意識せずにいられるだろ?」

 いや、無理です。

 そう答えられるだけの余裕がなかった。
 幼少時から命を狙われたり集団で石を投げられたりしかしてこなかったナルトは、こんなことを知らない。
 どうして、こいつが女だったってだけで、こんなに動揺しなければならない?

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