「 女と男の距離1 」

 山のように花束やプレゼントの積まれた部屋で。
 なにが不満なんだ、と訊く。
 欲しいものはなんでも与えてやっているだろう。
 暗殺戦術特殊部隊、通称暗部。その総隊長を務めているナルトは、使い道のない金が大量に溜まっている。死の危険のある任務ばかりのため、ひとつの任務で得られる金は、他の任務とは比べ物にならないほど高い。たくさんの金を得るが、しかし、無欲なナルトは何も買わないので、金ばかり溜まってゆく。

「大きな家も買ってやった。たくさんの服も、豪華な食事も、きれいなアクセサリーも、何でも。他に、何が欲しいって言うんだ。何が不満なんだ」

 そう問われた彼は、寂しそうに笑う。
 不満? そうだね、おれは、

 彼の細い指がナルトの頬に伸びる。
 繊細なものを扱うように、ゆるやかに撫でる。

「敢えて言うなら、あんたが勘違いをしていることが、ちょっぴり不満かもしれないね。うずまき、」彼の茶色の瞳が細まる。「おれが、ものを積まれてなびく安い女だとでも思っているのか?」

 心外だな、と、彼、否、"彼女"は付け加えた。

 ナルトによって与えられたフェミニンなドレスを身にまとい、きらびやかなアクセサリーを光らせる彼女は、普段のボーイッシュな姿からは考えられないほどに『女』だった。
 髪も伸ばし、化粧もした彼女は、本当に美しい女性だった。
 豊満な胸を強調するような、ポルノグラフティを纏わせるドレス。
 大きく柔らかそうな乳房、きゅっとくびれた腰、ふわふわのスカートに隠された尻。
 彼女よりも可憐で美しい女性を、ナルトは見たことがない。

 太ももまでの丈のスカートから伸びる、白く細い脚を見せつけるように、彼女は組み替えた。
 紅の引かれた唇が笑みの形を作る。
 ソファに腰掛けたまま、優しげに、彼女は両手を広げた。

「おいで」

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