「 3 」

 ――――

 学園で、裕也の人気は異常だった。
 ナルトの世界にいた時も「生徒会とかやっててそれなりに人気だったんだぜ」と何気なく言っていたが、本当にその通りだった。
 裕也が廊下を歩けば通行人がみんな振り返り、そっちこっちから挨拶が聞こえてくる。休み時間教室でも彼は常に複数の人間に囲まれていた。友達が多い。皆が彼に寄ってくる。芸能人のようだった。


 おしゃべりなクラスメイトに聞いた話では。
 そもそもこの男子高では、生徒会役員選挙はほぼ人気投票のようなもので、顔の美しい裕也は、自分が立候補していなくても勝手に票が集まっていたらしい。(本人の知らぬところで)当選してからの初めての集会で、彼は壇上でこう言った。「こういうのあんまり得意じゃないけど、まあ決まっちゃったんなら仕方ないから責任もってやりますね。だからみんなも協力してね」と最後に極上の甘い笑みをくっつけての短いスピーチ(?)だった。

 クラスメイトの話はまだ続く。
「内海くんはね、まあ見ればわかると思うけど、すごく人気なんだよ。ファンクラブまであるんだから」
 ナルトは不審に眉根を寄せた。「ファンクラブ? ここは男子校じゃないのか?」
「まあ、言うなれば、『男子校だから』かな。」話し口調がだんだん興奮げになってくる。「このむさ苦しい男だけの空間に咲いた高貴な一輪の花のような美しく可愛らしい内海くん! 汗臭い男子高のなかで一人いい匂いを漂わせる麗人。整った顔に、非凡で甘い声。そしてトドメに甘く優しげな微笑み。そんなものを向けられて、僕たち思春期の男が正常な神経でいられると思うかい? なぁ、ナルトくん!?」
 話を振られて、ナルトは不快感に顔をしかめた。
「お前らはそういう汚い目であいつを見ているのか」
「いやいや、そんな、そういうわけじゃないさ!」言い訳がましく早口で返答される。「ただ、花を愛でるように、みんなで遠くから見ているだけだよ!」
「ふーん。遠くから、ねぇ…」
 そこまで言って、チラリと、教室の中央で人だかりに囲まれている裕也へ一瞥をくれ、またクラスメイトへと視線を戻す。意志を秘めた強い目。
「で。そのファンクラブとやらを潰すのはいけないのか?」
「え?」
 何を訊かれているのか分かっていない様子のクラスメイトに、ナルトは表情を変えないまま再度言った。天気を訊くかのように、なんでもないことのように。
「気に入らない集団をぶっ潰すのは罪になるのか、って聞いているんだ。その不愉快な団体を解散させるのはいいのかって」


-----------------

PageTop

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -