「 4 」
教室にて。
――――――――――――
**ある少年視点**
――――――――
最近転入してきた、うずまきナルトという青年。
陽光を受けきらきらと輝く金糸。
コバルトブルーの瞳。
彼はよく内海くんの隣で笑っている。
まるで自分たち以外はどうでもいいように、2人だけの世界に入っている。
一度会話を盗み聞きしたが、何の話かぼくにはさっぱり分からなかった。
ちゃくら?とか、木の葉とか、誰誰がどうした、あの時はおもしろかったぜ、とか。ふたりだけの秘密の思い出話に華を咲かせるように。
そして、それを同じファンクラブの人たちに報告しに行こうと席を立とうとした時、
金色の彼は初めて内海くんから視線を外し、内海くんの背中(肩)越しに、ぼくを見た。
目が合う。
そして、彼は。
前髪を手でかき上げながら、優越に目を細め、口端を上げる。
にやり、と。
笑ったのだ。
ぼくを見て。
優越感に満ちた蒼い目で。
彼は、ぼくが彼らを見ていたことを、そして何を思っていたのかを、すべて知っていながら、あんな、2人だけが分かる話をしていたのだ。
爆発しそうな嫉妬を必死に抑え込もうともがいているぼくを、彼は嘲笑うように。
ぼくに、見せつけていた。
おれらの世界に、入ってこられるものなら、来れば? と。
気に食わない。
ガタン、と音を立てて立ちあがった。
勢いよく立ち上がったために、椅子が倒れる。大きな音と共に。
驚いた様子で、内海くんが振り返った。
大きな目をさらに大きくさせて、ぼくを見た。
内海くんがぼくを見てくれた、と思うと、ドキンと心臓が跳ねた。
内海くんの澄んだ瞳が、ぼくをうつしている。
ドクドクと暴走する心臓を手で押さえながら、そそくさと教室を出ようとする。
倒れた椅子をそのままに、後ろのドアから廊下に出ようとする。
もうこの空間にはいられないから。
我慢できない。
その時。
「ねえ、」
背後から、耳に心地よい声。
恋焦がれてやまない声。
ぼくの、大好きな声。
足元から全身が凍りついたように、ぼくの身体は動かなくなった。
いい匂いがする。
背後から足音。
こちらに近づいてくる。
内海くんが。
「ねぇ、斉藤くん」
ぼくを呼んで。
視界にゆっくり入ってきた、甘く優しげな顔立ちの人。
にっこりと笑みを浮かべ、彼はぼくに手帳を差し出してきた。
「これ、落としたよ。あんたのだろう?」
「あ…ありがとう…」
カラカラに乾いた喉で、やっとの思いでそれだけ口にして、差し出された手帳を受け取る。
ぼくが受け取ったのを見ると、内海くんは優しげに笑みを深める。長い睫毛が彼の白い頬に影を作っていた。そのまま彼はまたぼくの横をすり抜け、あの転入生の元へと戻っていった。
内海くんとお話できて、内海くんがぼくを見てくれて、心臓が早鐘を打ち続ける。止まらない。ドキドキと、苦しい。
でも、もっと苦しいのは、
ぼくたちファンクラブの人たちが遠くから眺めることしかできない美しい人を、
あの金髪碧眼の男が、独占していることだ。
――許さない。
手帳を持つ手に力が入る。
ファンクラブ既定の書いてある手帳だ。
本人に迷惑をかけないために、遠くから見守ることや、写真を撮ってはいけない、話しかけてはいけない、などと細かいことが書いてある。
それを。
あの金髪は、平然と無視しているのだ。
ぼくらが大切に大切に見守ってきた内海くんを、突然どこからかフラッとやってきた奴に、奪われてしまう。
――絶対に、許さない。
させてたまるか。
ファンクラブ会長として、そして斉藤和也個人として、
ぼくはあいつを許さない。
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**ある少年視点**
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最近転入してきた、うずまきナルトという青年。
陽光を受けきらきらと輝く金糸。
コバルトブルーの瞳。
彼はよく内海くんの隣で笑っている。
まるで自分たち以外はどうでもいいように、2人だけの世界に入っている。
一度会話を盗み聞きしたが、何の話かぼくにはさっぱり分からなかった。
ちゃくら?とか、木の葉とか、誰誰がどうした、あの時はおもしろかったぜ、とか。ふたりだけの秘密の思い出話に華を咲かせるように。
そして、それを同じファンクラブの人たちに報告しに行こうと席を立とうとした時、
金色の彼は初めて内海くんから視線を外し、内海くんの背中(肩)越しに、ぼくを見た。
目が合う。
そして、彼は。
前髪を手でかき上げながら、優越に目を細め、口端を上げる。
にやり、と。
笑ったのだ。
ぼくを見て。
優越感に満ちた蒼い目で。
彼は、ぼくが彼らを見ていたことを、そして何を思っていたのかを、すべて知っていながら、あんな、2人だけが分かる話をしていたのだ。
爆発しそうな嫉妬を必死に抑え込もうともがいているぼくを、彼は嘲笑うように。
ぼくに、見せつけていた。
おれらの世界に、入ってこられるものなら、来れば? と。
気に食わない。
ガタン、と音を立てて立ちあがった。
勢いよく立ち上がったために、椅子が倒れる。大きな音と共に。
驚いた様子で、内海くんが振り返った。
大きな目をさらに大きくさせて、ぼくを見た。
内海くんがぼくを見てくれた、と思うと、ドキンと心臓が跳ねた。
内海くんの澄んだ瞳が、ぼくをうつしている。
ドクドクと暴走する心臓を手で押さえながら、そそくさと教室を出ようとする。
倒れた椅子をそのままに、後ろのドアから廊下に出ようとする。
もうこの空間にはいられないから。
我慢できない。
その時。
「ねえ、」
背後から、耳に心地よい声。
恋焦がれてやまない声。
ぼくの、大好きな声。
足元から全身が凍りついたように、ぼくの身体は動かなくなった。
いい匂いがする。
背後から足音。
こちらに近づいてくる。
内海くんが。
「ねぇ、斉藤くん」
ぼくを呼んで。
視界にゆっくり入ってきた、甘く優しげな顔立ちの人。
にっこりと笑みを浮かべ、彼はぼくに手帳を差し出してきた。
「これ、落としたよ。あんたのだろう?」
「あ…ありがとう…」
カラカラに乾いた喉で、やっとの思いでそれだけ口にして、差し出された手帳を受け取る。
ぼくが受け取ったのを見ると、内海くんは優しげに笑みを深める。長い睫毛が彼の白い頬に影を作っていた。そのまま彼はまたぼくの横をすり抜け、あの転入生の元へと戻っていった。
内海くんとお話できて、内海くんがぼくを見てくれて、心臓が早鐘を打ち続ける。止まらない。ドキドキと、苦しい。
でも、もっと苦しいのは、
ぼくたちファンクラブの人たちが遠くから眺めることしかできない美しい人を、
あの金髪碧眼の男が、独占していることだ。
――許さない。
手帳を持つ手に力が入る。
ファンクラブ既定の書いてある手帳だ。
本人に迷惑をかけないために、遠くから見守ることや、写真を撮ってはいけない、話しかけてはいけない、などと細かいことが書いてある。
それを。
あの金髪は、平然と無視しているのだ。
ぼくらが大切に大切に見守ってきた内海くんを、突然どこからかフラッとやってきた奴に、奪われてしまう。
――絶対に、許さない。
させてたまるか。
ファンクラブ会長として、そして斉藤和也個人として、
ぼくはあいつを許さない。
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