「 2 」

 授業を終え、生徒を全員帰し、業務日誌を書き、教師のミーティングに参加し、それが終わったら最後に校舎の見回りをする。今日も異常なし。
 それら全部が終わったころには、もう、夜になっていた。
 ――やばいな。早く行かないと。これ以上遅い時間になったら先方に迷惑だ。
 午後6時。
 10月になり、空気がやや肌寒くなってくる。
 生徒からプレゼントされたマフラーを首に巻き、俺は校舎を出る。

 すると。
 寒空の中、
 校庭のブランコで見つけた、見慣れた人影。
 彼はこちらに気付いていないようで、ひとり寂しそうにブランコをこいでいた。キィ、キィ、と、孤独に震えるように、音を出している。視線は地面。普段の明るい姿からは考えられないような、寂しそうな姿。…これが、本来のナルトなのだ。
 ナルトはよくブランコに乗っていた。一人で。それを見るたびに心が痛んだ。

 暗い気持ちになっていた心を叱咤し、無理やり顔に笑みを貼り付ける。
 教師が暗い顔をしていては、生徒まで暗い気持ちになってしまう。
 俺は、つねに"教師"でいなければ! 教える師、だ。
 手を振りながら、明るい声音で叫ぶ。「おーい、ナルトー!」

 ナルトがこちらに気付く。
 パァッと顔が明るくなる。「あーっ! イルカセンセー!」
 子どもらしく全力で駆け寄ってきたナルトを抱きとめ、俺はナルトの頭を撫でた。

「どうしたーナルト? また一楽に行きたいのかー?」
「えーっ! 連れてってくれるの?! 行く行く! 行くってば!」
「あー、でも、今日は無理だなー。この後、先生、用事あるからな」
「えー? 何の用事だってばよ」
「あー、それは…その…」

 家庭訪問だけど…、
 一応生徒(シカマル)のプライベートに抵触する内容だから適当にはぐらかそうと思ったが、ナルトの無垢な目で見つめられて、つい正直に喋ってしまう。「シカマルの家庭訪問さ」

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