「 9 」
内海のことに気を取られ面をつけるのを忘れていたのを、狐空は今気付いた。
しかし、青年の姿に変化はしてある。
己をそのまま17〜18歳の姿に変化させたものだが、頬の三本線の傷も無いし、皮膚の色も元通り白く戻している。それに、第一に、表の自分の絶対にしないような表情を浮かべている。天真爛漫なドベのうずまきナルトは、こんな他人を排斥するような冷たい目をしない。
俺の演技は完ぺきだった。バレるはずがない。
狐空青年は鋭くシカマルを睨んだ。
「俺をあの九尾の化け物と一緒にするな。憶測で物を言うと次の瞬間お前は今度はあの世で迷子になっていることになるぜ」
ぜえはあと息を乱しながら狐空のところまで来たシカマルは、苦しそうに壁に寄りかかり、頭一つ分背の高い狐空を見上げた。
「お前の面倒臭ぇ事情なんてどうでもいいんだよ。…俺はお前の腕の中のその子に用事がある」
「何の用だ」
シカマルは面倒臭そうに顔をしかめた。
「わからないのか? 頭が悪いのは演技だと思っていたが、本当に馬鹿だったのか? 素も仮面も頭が悪いなんて救えないな。どっちみち馬鹿ならお前演技する必要ねぇよ」
狐空は口端を上げる。「へえ、お前、そんなによく喋る奴だったか?」
シカマルは舌打ちする。「会話が面倒だ。いいから、その子をよこしな。俺が見てやるよ」
「お前が内海を救えるとでもいうのか」
「そうだ。無知なお前や詮索好きな医療班に代わって、そのワケアリの子を俺が見てやるっつってるんだ。お前が賢いなら早く渡せ。」
もう俺に口を開かせるなよ、メンドクセー。そう呟くシカマルを、狐空は冷静に見つめた。
――こいつは、信用してもいいのか?
狐空の目の前にいる少年は、いつもの奈良シカマルと同様、やる気の無さそうな顔をしている。
しかし、よく見ると、その眼の奥に確固とした強い意志が見え隠れしている。歳不相応な強烈な自我。やる気の無さそうな顔の裏に秘める、莫大な知識や経験に裏付けされたような確立した理性。
自分の内に別の自分を隠している、という、己に似たものさえも感じられる。
直感だった。こいつは、大丈夫だ。
気付くと、狐空は内海をシカマルに渡していた。
内心、忸怩たる思いだった。
おれに知識があれば、こんなガキに内海を任せることはなかった。
ガキと言っても実際狐空と同年代なのだが、狐空の壮絶な半生ゆえの人生経験の深さから見ると、シカマルはまだガキに思えた。
顔は平静を模りながら、隠れて、悔しさに己の腕をつねる。
シカマルが内海を横抱きに受け取り、そのまま内海を優しく床に寝かせた。
彼が内海を見る目は、先ほど狐空に向けた眼とは違っていた。
目の前の痛々しさに憂えたような、しかしどこか歓喜を抑えているような、そんな複雑な感情を孕んだ眼。
それを確認した狐空は、周りに気付かれないための結界を、再度張り直した。
しかし、青年の姿に変化はしてある。
己をそのまま17〜18歳の姿に変化させたものだが、頬の三本線の傷も無いし、皮膚の色も元通り白く戻している。それに、第一に、表の自分の絶対にしないような表情を浮かべている。天真爛漫なドベのうずまきナルトは、こんな他人を排斥するような冷たい目をしない。
俺の演技は完ぺきだった。バレるはずがない。
狐空青年は鋭くシカマルを睨んだ。
「俺をあの九尾の化け物と一緒にするな。憶測で物を言うと次の瞬間お前は今度はあの世で迷子になっていることになるぜ」
ぜえはあと息を乱しながら狐空のところまで来たシカマルは、苦しそうに壁に寄りかかり、頭一つ分背の高い狐空を見上げた。
「お前の面倒臭ぇ事情なんてどうでもいいんだよ。…俺はお前の腕の中のその子に用事がある」
「何の用だ」
シカマルは面倒臭そうに顔をしかめた。
「わからないのか? 頭が悪いのは演技だと思っていたが、本当に馬鹿だったのか? 素も仮面も頭が悪いなんて救えないな。どっちみち馬鹿ならお前演技する必要ねぇよ」
狐空は口端を上げる。「へえ、お前、そんなによく喋る奴だったか?」
シカマルは舌打ちする。「会話が面倒だ。いいから、その子をよこしな。俺が見てやるよ」
「お前が内海を救えるとでもいうのか」
「そうだ。無知なお前や詮索好きな医療班に代わって、そのワケアリの子を俺が見てやるっつってるんだ。お前が賢いなら早く渡せ。」
もう俺に口を開かせるなよ、メンドクセー。そう呟くシカマルを、狐空は冷静に見つめた。
――こいつは、信用してもいいのか?
狐空の目の前にいる少年は、いつもの奈良シカマルと同様、やる気の無さそうな顔をしている。
しかし、よく見ると、その眼の奥に確固とした強い意志が見え隠れしている。歳不相応な強烈な自我。やる気の無さそうな顔の裏に秘める、莫大な知識や経験に裏付けされたような確立した理性。
自分の内に別の自分を隠している、という、己に似たものさえも感じられる。
直感だった。こいつは、大丈夫だ。
気付くと、狐空は内海をシカマルに渡していた。
内心、忸怩たる思いだった。
おれに知識があれば、こんなガキに内海を任せることはなかった。
ガキと言っても実際狐空と同年代なのだが、狐空の壮絶な半生ゆえの人生経験の深さから見ると、シカマルはまだガキに思えた。
顔は平静を模りながら、隠れて、悔しさに己の腕をつねる。
シカマルが内海を横抱きに受け取り、そのまま内海を優しく床に寝かせた。
彼が内海を見る目は、先ほど狐空に向けた眼とは違っていた。
目の前の痛々しさに憂えたような、しかしどこか歓喜を抑えているような、そんな複雑な感情を孕んだ眼。
それを確認した狐空は、周りに気付かれないための結界を、再度張り直した。