「 2 」

 しかし。
 思いとは裏腹に、現実は厳しかった。

 守りたい、放っておけない、と裕也は思っている。
 思ってはいるが、あの森の事件以来、裕也は完全に避けられていた。

 裕也の心を乱す少年、うずまきナルトは、たしかに、裕也の隣の部屋に住んでいた。ヒナタ嬢も言っていたし、それに事実、3日前に、会った。あの傷だらけの扉を開けて、金色の髪の少年がにこりとこちらに笑顔を投げかけてきたのを確かに記憶している。
 それが、次の日から、お隣は誰もいなくなった。
 いや、少年はちゃんと生活しているのかもしれない。
 でも、きれいに、時間がかみ合わないのだ。
 夜、商店街からの帰り道に、ふと自分のおんぼろアパートを見上げてみると、お隣の部屋の電気がついているのが見える。
 「あ、いる。」そう思って駆け出し、急いで階段を駆け上り、おざなりにノックしてから、平素から施錠されていないドアを開けてみる。
 いない。
 電気も、いつの間にか消えている。
 真っ暗の、何の気配もない部屋。
 机の上に牛乳の空きパックやらカップ麺のゴミやらが散乱していることから生活感はある。でも、あるじがいない。
 いつもこんな感じである。絶対に、会わないのだ。完全に避けられている。

 ――おれも忍だったら、奴を追いかけられるんだろうけど。

 あんな魔法みたいのをいまさらどう努力したってどうにもできない気がする。
 だいたい、おれはこの世界の住民じゃないんだから、あれを使える体ではないはずだ。あんな火やら何やらを余裕で出せるのは、人体の構造がどこか根本的に違うからである。おれの世界にはあんなことができる人間はひとりもいなかった。なにか一つ新しい臓器が増えているのかもしれない。とにかく裕也は諦めていた。もう人体の構造上無理だからおれが努力したところでどうにかなる問題じゃない、と。だから忍者養成学校も考えなかった。行ったところで無駄だから。
 それが、骨の髄まで理系の裕也の結論だった。「もしかしたら俺にもできるかも☆」なんて1%も頭に上らない。

 戸籍の無いことを理由に、働くことを拒否され、取り敢えず帰宅することにした。
 戸籍を取りに行こうとも思ったが、まずどうすればいいか分からないし、それに、狐空の反応からして、おれは殺されてしまうかもしれない。戸籍がないってことは、この里に存在していないも同然だから、そしたら他の里のスパイか何かだと思われても全く不思議じゃないし。忍者が当然にいる世界ってことは、争いも絶えないだろうし、人が人を殺すのが当たり前な時代なのだろう。だからおれ一人殺すのだってためらいも何もないだろう。
 戸籍を取りに行ったら、怪しまれ、尋問にかけられたのちに殺される。

 ――デッド オア ニート ってところか…

 はっはっは、
  笑えねぇ…

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