11日目


よりによって報告日前日に熱をだすなんて。自分が嫌になると同時に、ゼブラさんに申し訳なく思う。ただでさえ私はゼブラさんから見たら行動が遅いのに、熱のせいで更に行動が鈍る(…うん、言ってて悲しくなる)。でも、報告日を変更はできない。ましてや監視の私の都合なんかで。ラブ所長は優しい方だから訳を言えばきっと許してくれるだろう。でも甘えるばかりじゃダメなんだ。だから私はゼブラさんとハニープリズンへ向かう…はずなのですが。


「うるう、テメーは来んな」

「な、何でですか。咳もくしゃみもしてませんよ?」

「熱あるやつを連れて行けるか。いいからテメーは大人しく寝てろ。トリコのやつに看病を頼んでみるか…?」


私を連れて行くことなど毛頭思っていいないゼブラさんは、むしろ私を誰に看病させるかが問題なようで、ひたすら頭をひねっている。ゼブラさんのそんな優しさに嬉しくなりながらも、体の内側に何か重たいものが積もっていく感じがした。


「ゼブラさん、私はゼブラさんの監視係です」

「あ?」

「ひぃっ……だ、だから私は、ゼブラさんから離れるわけにはいかないん、です」

「……面倒事は起こさねぇと約束する。だから寝てろ」


そう言って私の頭をごしゃごしゃと乱暴に撫でつけるゼブラさんに、喜びは感じなかった。胸にあるのは罪悪感と、さっきから積もっていく重たいモノ。
分かってます、分かってるんです。ゼブラさんが約束は必ず守るっていうことを。乱暴者だけど優しいことを。でもそんなのは関係ない。ゼブラさん、貴方は知らないでしょう。分からないでしょう。知ることはないでしょう。



「断ります」



貴方の優しさが、今は私の心の重りになっていることを。
貴方の気遣いで、今私が傷ついていることを。

きっと、強い貴方が理解することはないでしょう。


「あぁ?拒否権はねぇんだよ、うるう]

「ゼブラさんの提案を、実行することは、無理です。何と、言おうと正しかろうとききま、せん」

「……ふざ、」

「関係ないんですよ。ゼブラさんが必ず、約束を守る人だとか、暴れないと、約束しようが、全部全部、関係ないんです」



ごめんなさい




「ゼブラさん、貴方は犯罪者なんですから」




傷付けて、ごめんなさい




「……」

「だから、監視が必要なんです」


ゼブラさんの顔なんて、今はとてもじゃないけど見れないから。ただ目線を下へと移す。目に映る私の足は、微かに震えていた。ごめんなさい、ごめんなさい。


「……そうかよ」


吐き捨てるように言って背を向けてドアノブに手を掛ける。私はその背についていく。ゼブラさんの顔を見たくなくて、私は後ろについていく。なんて私は弱いんだろう。