10日目


今朝、キッチンから聞こえてくるうるうの心音や呼吸音がいつもと違って乱れているのに気付いた。



「…風邪、か」

「は、はい……多分」


飯を作っているうるうを止めて体温を測れば、39という数字が表示された。馬鹿が、と舌打ちをすると、聞きなれた声が申し訳なさそうに謝る。だが、いつもと違って掠れていて小せぇ。前から体調が崩れていたのに気付かなかった自分にムカつく上、今の謝罪が朝飯を作れないことに対することだと分かっているからなおさらイライラする。「っひ、」と小せぇ悲鳴が漏れた。ああ、睨んじまったのか。


「今日は飯食って薬飲んで寝てろ。オレはどこにもいかねぇからよ」

「…はい」

「あと、飯は粥でいいよな」

「えっ……?」


心配そうな目で見つめられた。さっきより心拍数が上がってるし、何で顔色が赤から青に変わってんだ、おい。


「…ぜ、ブラさんって…料理なんて、できるんですか?」

「………」





ふざけんなと怒鳴りつけてから1時間後、普通の卵粥をうるうの前に出してやった。


「粥ぐれぇ作れるに決まってんだろ。テメーはオレを何だと思ってんだ」

「ゼブラさん、です…」

「オレが料理できねぇと思ったら大間違いだぜ。チョーシにのんなよ」

「…あの、すみませんから…もう寝かしてください」


しまった、悪化させるところだった。とりあえずオレは冷蔵庫や倉庫にあったもん食ったから今日は寝とくか。39度は流石に高いが、うるうはグルメ細胞あるんだから、どうせ3日もあれば治るだろ(多分)。まさかインフルエンザじゃあるまいし。


「……頑張って、明日までに治しますね」

「明日ぅ?慌てすぎだろ、無理に治そうとすんな」

「だって、明日、報告……ハニープリズンに、行かないと」

「……あ」


忘れてた。そういやそんなのあったな。
んなもん無視しときゃいいだろ。今はテメーの体調を第一に考えとけ。


「…なんかあったら、オレを呼べよ。すぐ来てやる」

「ありがとうございます、ゼブラさん…」


そんなこと、言わねぇがな。