大事なものに代わりなんてない
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今日は待ちに待った凛とも買い物の日
日差しはやや強めの夏初め
すずは去年の夏にお父さんに買ってもらった帽子をかぶっている

『凛遅いなぁ...』

時間は約束の3時を過ぎようとしていた
商店街の真ん中にある大きな噴水で待ち合わせ、
と行ってあったのに凛はまだ来ない

「ねぇねぇー、君一人?」
「あ、もしかしてのナンパ待ち?」
『え?あ、いや...違いますっ』

ガラの悪い2人組が絡んできた
人はたくさんいるがみんな見て見ぬふりで
助ける素振りなど見せない

「まぁ、俺らとどっか行こうか?」
「何か奢ってあげるからさっ」
『...っ、り、凛...っ』

恐怖で体が震える
女1人で男2人の力に勝てるはずもなく
連れて行かれそうになったとき、

「おい、人のモンに手だすなよ」

その声を聞いた瞬間、涙が出そうになった
安心感が湧いてきて慌てて凛を見る

「・・・っんだよ、連れ待ちかよ」
「興ざめ、行くぞ」

2人は走るように去って行った
その背中が見えなくなったと途端
プツリ、と線が切れたかのように体の力が抜けた

「大丈夫か?」
『うん。助けてくれてありがとう』
「ってかお前どこで待ってんだよ
待ち合わせ場所は噴水前だろ?
お前がいるここは噴水の真後ろ」
『・・・え』
「なんかザワザワしてるから来てみれば
・・・まじで心臓止まるかと思った」
『り、凛ごめんっ』
「・・・まぁ、気分転換にどっか行くか」

そして凛に手を引かれるまま来たのは湖が見える綺麗な場所
ボートに乗ってる人や鳥にエサをあげている人もいる

『わぁ・・・、綺麗な場所だね』

ふんわり笑うすずを見て凛も少し落ち着いてきた
鳥が集まるところへ駆け寄って逃げる鳥を追いかけたり
見てて飽きないな、と心の中で微笑んだ
その瞬間、ブワッと強い風が吹きすずの帽子は風に攫われ湖に落ちた

『あっ!!帽子が・・・っ』
「待て!!落ちるぞっ!!」
『でもっ、でもあれはお父さんに買ってもらった大切な帽子なのっ』
「・・・っ!!、ちょっと待ってろ」

今にも泣きそうなすずに静止をかけて
凛は帽子を追って湖に飛び込んだ

『り、凛っ!!そんな・・・風邪引いちゃうよっ』
「・・・・・・・。」
『ほんとにっ・・・もういいからっ』
「・・・・・・・。」

心配の声も聞かず、
凛は湖の中にどんどん入っていく
すずは驚きのあまりに
足がすくんでしまった

『凛っ、代わりの帽子くらいあるからっ』
「ねぇよ。
そんな大事なもんに代わりなんかねぇよ」

そう言って凛はすずに帽子を差し出した
上半身までずぶ濡れになってまで取ってくれた凛に
すずはドキドキして顔が赤くなった

『・・・ありがとっ、大丈夫?寒くない?』
「あぁ、だいじょ、・・・っくしゅ」
『あぁああ・・・、そうだ!!私の家近いから、行くよっ』
「は?・・・おい、待てっ」

腕を引っ張りその場を離れていく
慌てながらも付いてきてくれる凛を見て
すずは駆け足で家へ向かった



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