-SEID サイアリーズ-
甥のファールーシュが女の子を連れて帰って来た。
唯の少女ではない。
その身に着けている品々はどれも最高級品。
シンダルの遺跡でファールーシュの黎明の紋章に反応して少女が現れたのだと言う。
彼女の身に着けている装束はファレナの正装に似ていた。
今は着替えさせてベットに寝かせている。
「ファールーシュが執着を見せるなんてねぇ…」
どんな子かも分からないのに…
と呟いた。
「……ん…ぅ…??」
長い睫が揺れ少女が覚醒しようとしている。
夢現で焦点が揺れる髪と同じ漆黒の黒の瞳がこちらを見た。
少女は一瞬にして理性を取り戻し、意志の強い瞳で私を見上げる。
「大丈夫かい?どこか具合の悪い所とかないかい?」
少女の不安を少しでも取り除こうと優しく声を掛けた。
少女は揺るりと頭を振って
「ご心配痛み入ります。それよりも此処は何処の国なのでしょうか?」
鈴を転がすような愛らしい声で此処が何処だか問う。
「ファレナだよ。私の名前はサイアリーズ。アンタの名前は?」
「私の名はエイコと申します。衝かぬ事をお伺いしますが、ファレナとは何処でしょうか?」
「エイコ、ファレナを知らないのかい??」
思わず声を上げてしまった。
エイコと名乗った少女は困惑気に
「私の世界ではファレナという国は存在してなかったかと…」
これは豪い事になったかもしれない。
私はエイコに
「ハルモニア、ハイランド、ジョウストン都市同盟、赤月帝国に聞き覚えはないかい?」
幼い子供でも知っている大国の名前を挙げるが、どれも彼女は知らないと言う。
「私が居た世界は地球と言います。太陽系第三惑星に属してます。地球の中には幾多の国が存在し、その中の一つに日本という小さな島国があります。」
エイコは真っ直ぐと私を見て
「アメリカ、イギリス、中国という国をご存知でしょうか?」
知らない名前を挙げた。
「…そんな国なんて聞いた事もないねぇ。」
エイコは一瞬だけ顔を泣きそうに歪め次には凛とした表情で
「今挙げた国は先進国と呼ばれ地球を代表する国の一つです。勿論、日本もですが。太陽の国、黄金の国と呼ばれる豊かな国です。結論として私はこの世界の人間ではないのでしょう。」
淡々と自分が置かれている状況を述べた。
太陽の国と聞いて私はファレナの象徴である太陽の紋章を思い浮かべてしまった。
アレがこの子を喚んだのだろうか?
「迷惑を掛ける事、心苦しく思いますが私がこの世界の理を理解するまで此処に置いて頂けないでしょうか?」
スっとたおやかに頭を下げた少女に私は是としか答える統べが無かった。
太陽の紋章がエイコを喚んだのか…それとも黎明の紋章が答えたのか定かではないけれど、エイコという少女は人の上に立つ教育を受けている。
その瞳に宿るのは王者のソレ。
星が廻る。
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