-SIDE エイコ-
内乱は終わりを告げ、ファールーシュが太陽の紋章を宿した事で彼はファレナの象徴となった。
私?
私は未だに元の世界に戻る事すら出来ていないのよ。
あの変態魔女、次に出会ったら半殺しじゃ済まさないわ。
世界を渡った代償として肉体が年齢(とし)を重ねる事がないと言われた時は、本気で彼女の消滅させようかと迷ったぐらいだもの。
まぁ、生きる時間が長くなったのだと思えば良い事よね。
納得はしていないけども…
女王騎士の役職は廃され、代わりに黎明騎士団が任を担うことになった。
男性陣からはベルクートとロイ、リヒャルトが、女性陣からはハヅキ、フェイレンが親衛隊として動き回っている。
「エイコ、此処にいたんだ。」
探したんだよ?
と笑うファールーシュに私は
「ファールーシュ陛下、供を着けないとベルが泣きますよ?」
皮肉と事実を混ぜて伝えるも
「あははは、それって何時もの事だよね。」
爽快に笑い飛ばしてくれたわ。
うん、何だか当初出会った純朴な少年は何処へ?
ファールーシュはグイっと私の腕を掴み身体を自分の方へ引き寄せた。
突然の事で、私は抵抗する間もなくファールーシュに抱き込まれる。
「エイコ、君だけは僕の前から消えないでね。」
迷子の子供のような言葉に私はクスリと笑った。
「(この世界に飽きない限りは)ファールーシュ、貴方と共に」
不実な月に交わす約束を告げる。
-SIDE ファールーシュ-
リムを討って、ゴドウィンを倒して、太陽の紋章を宿し、僕は新ファレナ王国の頂点に君臨した。
どんな時もエイコだけは傍に居てくれたんだ。
エイコがいなければ、リムを手に掛けることもゴドウィンを倒す事も、民を守る事も出来なかったんじゃないかな?
僕が太陽の紋章を宿した時、エイコが宿していた黄昏の紋章は僕の左手に収まった。
その時、僕は不覚にもエイコが何処かへ行ってしまうんじゃないかって不安になったんだよ。
リムを手に掛けた事も、玉座に座った事も後悔はしていない。
叔母上はどうかしらないけれど…
でもね、エイコが僕の傍からいなくなるのだけは許せないんだ。
こっそり政務を抜け出してエイコを探しに行く。
途中、ロイ達に会って嫌味を言われたけど気にしない。
そして僕はエイコを見付けた。
夕焼けに照らされたソルファレナを一望出来るテラスにエイコはいた。
遠く、遠く、どこか此処と違う世界(場所)を見続けるエイコに僕は何とも言えない気持ちになる。
この腕の中に閉じ込めて、僕だけを見るように何処にも行けないようにしたいと思うんだ。
「エイコ、此処にいたんだ。」
探したんだよ?
とエイコに告げれば彼女は
「ファールーシュ陛下、供を着けないとベルが泣きますよ?」
子供をあやすように諌めた。
さり気無く臣下として距離を保とうとするエイコが遠く感じる。
もっと近くに感じていたいのに…
ドロドロとする内心を押し隠し
「あははは、それって何時もの事だよね。」
歪んだ笑みを浮かべて僕は笑った。
故郷を想ってファレナを見るエイコ。
僕の目の前から消えないで、何処にも行かないで…
無意識に僕は彼女を抱き寄せ腕の中に閉じ込めた。
ふんわりと香る彼女の薫りに僕は酔いしれる。
「エイコ、君だけは僕の前から消えないでね。」
君が不老と知った時、僕は太陽の紋章を受け入れた事に感謝した。
永劫に近い永い年月を共に過ごせる君の傍にいたいから…
「ファールーシュ、貴方と共に」
一番欲しい言葉をくれるエイコ。
太陽に誓って君を永遠に手放さない。
キラキラと夕陽が沈むソルファレナ。
もっとも美しい幻想の世界の国の大国は、若き王と美しき異邦人の手で世界を紡いで行く。
後に太陽継承争いと語り継がれる事となる。
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