-SEID 矢神姫華-
私には記憶がない。
でもそれで苦労した事はないの。
だって何故か不思議と私の都合の良いように物事が進んで行くから。
何か大事な事を思い出さないといけないんだけど、思い出せない。
でも最近こう思うの。
思い出せないのなら大した事ではないんじゃないかって!
名門校と言われる立海に通える事になったのは凄く嬉しかった。
小学校を卒業した時は公立の中学校に行くんだって思ってたけど、お世話になっている施設に立海のお偉いさんから立海に通わないかってお誘いがあったんだ!
凄く平凡な私だけどラッキーさは非凡じゃないかな?
立海は他校とは違って3月の末に入学式がある。
晴れて私は立海生になったんだけど、凄く格好良い先輩が多いんだ。
友達も沢山出来て凄く幸せ!
でももっと幸せになりたいの。
何でも私の思い通りになった。
素敵な先輩だってきっと私の思い通り恋仲になる筈だもん。
だからね、初めて嘘を一つだけ吐いたの。
『幸村先輩と付き合ってるの』
ってね。
好き、好き、大好き!
沢山、姫華が愛してあげるから姫華を愛して!
早く真実になるのが待ち遠しいよ?
かくして夢見る少女は世界に波紋を投げかけた。
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