神様は見て嗤いました。
二人の女の違いに!
とても似通った二人の女は、全然別の方向へ歩み出していたからです。
一人の女は生に意地汚いほど執着し、魂になっても輪廻に戻らず平行世界を彷徨い続けたのです。
そしてある少女の中に入り、彼の少女が生を手放した際にこれ幸いと女は彼の少女の身体を得て今生を生きている。
上辺は聖母、中身は悪魔と称しても良い位に見事な猫被りは、天晴れなものです。
史上稀に見る性悪な女は、狂気を狂喜に換え周囲を虜にしていった。
しかし彼女は知っている。
彼女が彼女であるべくした世界に棄てられた事を彼女は他の誰よりも知っていた。
だからこそ彼女は誰よりも美しく歪んだ嘲笑(ほほ)えみを浮かべるのです。
もう一人の女は全く生に執着せず、与えられた選択肢が当然の権利と義務だと思っているのです。
死んで生き返るなんて神様でも無理な話。
別の世界で生き返るなんてとんだ茶番としか言いようの無い事だ。
でも彼女は自らの世界をアッサリと棄て、神様に別の世界で生きるという選択肢を選んだのです。
女は自分は神の愛娘だと勘違いしました。
様々な便宜を図って貰えるのは当然の義務と権利だと主張したのです。
何の努力もせずに手に入れた地位と権利に溺れ、ヒロインに酔いしれる自分を愛する女を滑稽だと神様は嗤いました。
朽ちて逝く肉体とは裏腹に女は益々欲を出して行くのです。
醜悪な女に神様は思いました。
一つ小石(イレギュラー)を投げ入れたらどうなるか?
広がった波紋はどんな結末を迎えるのか?
神様は愉しみで仕方有りません。
世界を自分で棄てた女は自分が世界を棄てた事に気付いてない事がどれ程愚かな事なのか知った瞬間の絶望は如何なモノか知りたかったのです。
だから神様は世界に棄てられた女に一つだけ力をこっそりと与えました。
「誰が正義ってね、それは勝ち残った存在が正義なのだよ。」
- 7 -
前 次