山田栄子は艶やかな笑みを湛えて微笑んだ。
「今日はホワイトデーだねぇ。」
バレンタインは冷涼からチョコを貰ったからね。
お礼として私はプリザーブドフラワーで作った小さな花束を手渡した。
うんうん、美少女にはやっぱり綺麗な花だね。
冷涼は頬を染めて礼を告げた。
可愛いものだね。
「栄子様、わたくしのも受け取って下さいませ。」
小さな箱を受け取れば、外見に似合わずズシっと重かった。
一体何が入っているんだ??
と内心突っ込みを入れるが表情(かお)に出すような無様な真似はしない。
「空けても良いかい?」
中身が気になって仕方がないんだよ。
と言外に告げれば冷涼はニッコリと笑顔で
「ご自宅にお戻りになられてからにして下さい。」
キッパリと切り捨てた。
うん、これでこそ冷涼だ。
「そう言えば、彼等にはお返しをされましたの?」
冷涼の疑問に私は男テニにチョコを施してやった覚えはないのだが??
と思考に耽っていれば
「あらあら、先月は害虫駆除を彼等の為に頑張ってされてたではありませんの。」
ニコニコと毒を吐いた。
もう名前も思い出さない先月の転校生を害虫呼ばわりかい。
流石は冷涼だ。
「アレがバレンタインの代物になるのかい?」
なったら彼等には到底返せる代物ではないね。
そんな私の気持ちを代弁するかのように冷涼が女神の微笑みで
「あら?ファンクラブの皆様に写真を撮って売れば宜しいではありませんか。」
鬼畜発言を宣った。
これでも私は金持ちだと思っているのだがね…
「毎回、彼等に付き合わされているのですから些細な事ですわ。微々たる小金も稼げて株の投資をするのも良いかもしれませんわね。」
おほほほ、と上品に笑いながら利潤を計算する冷涼。
やっぱり私の相方だけに鬼だった。
「ん、まぁ…今回の事は厄介だったからね。アレは渡りに船とばかりだったけど、アレがいなかったら神谷みおを処分する事が出来なかったもの。」
お礼は三倍返しなのだから精々頑張って稼いで貰おうじゃないか!
「じゃあ、早速彼等に連絡しておかないと、ね?」
クツリ、クツリと三倍返しを要求する強欲な女は嘲笑った。
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