「柳生、本音が出てるよ。」
飽きれ顔をする山田さん。
「そうでしたか?」
「そ、キモいぜよ。俺の目の前から消るなり!が正解。さて、夢から醒めた気分は如何?」
何気に仁王の物真似が上手ですね。
「最悪ですね。あんな電波のラリった人によく好感を持てたな自分。聖人君子にでもなれるんじゃ?と本気で思ってます。」
山田さんは、私の言葉を聞くと
「いやいや、紳士としての行動はどーした?」
ケラケラと笑う山田さん。
山田さんの方がずっと美人で魅力的なのに何故神崎に好意を持ったのか?甚だ疑問である。
「地球外生命体まで気遣う必要はありません。アレを人間扱い出来ません。」
山田さんは
「おや、酷いねぇ。まぁ、神崎さんは諦めてはいないみたいだよ。」
“皆平等に愛してあげるわ”とか言われちゃうんだよ。
ケラケラと笑った。
「皆ですか?」
私の疑問に山田さんは笑いを堪えながら
「そ、皆!君達、立海男子テニス部Rのブランドを背負っているんだ。神崎は君達に傅かれ、崇拝され、愛される唯一無二の存在になりたいのさ。」
嫌な回答をしてくれた。
真実に限り無く近いそれに思わず眉を寄せる。
「神崎の愛か、君達が男に走るかだよねぇ?」
背筋も凍るような究極の二択に
「山田さんと恋人になるみたいな選択肢は無いのですか?」
追加項目を希望する。
「あらいやだ。私の彼氏になりたいの?」
チャシャ猫の様に笑う山田さん。
「アレと付き合うよりは、山田さんとお付き合いしたいですね。」
「ふは、防波堤にしたいのかい?だが、私は君の恋人に恨まれたくないよ。」
ん?
恋人?
一体誰の事ですか?
と思うが何か聞いたら色々と駄目になるような気がする。
「む、此処は誰が恋人なのか突っ込む所なのに!てか、赤也なら確実に突っ込んで墓穴掘ってくれるのに!」
やっぱり突っ込んじゃ駄目だったか。
「はいはい、それよりも山田さんは今後はどうされるんですか?」
「私?そうねぇ、静観してるわ。動き過ぎちゃったもの。」
大丈夫?と目の前で振られる手をつい掴んでしまった。
「えー、手を離して貰えないかな?」
引き吊った表情(かお)をする山田さん。
「引っ掻き回すだけ好き勝手して放置なんてしませんよね?」
あ、やべって感じに視線をさ迷わせる栄子さん。
「えー、私は関係ないじゃん…うっわ、ゴメンよ。痛いってば!」
パッと手を放すとクッキリと付いた赤い手形。
「もー…睨まないでよ。大体ね、私は振りかぶった火の粉を払っただけよ。君達は、私に制裁する予定だったでしょ?」
ほら、よく考えて見なさいよと言われ、事の発端が何だったか思い出した。
「山田さんには感謝していますが、壊す専門なんて謳い文句は棄てて最後まで神崎の面倒を見てください。じゃないと幸村君と仁王に今日の山田さんの事を報告しますからね。」
仁王では心許ないので、幸村君を出せば山田さんは涙目で
「酷い、ユキちゃんは関係ないよね?仁王はどーでも良いけど……ユキちゃんは跳ぶにしても神崎とは別方向なんだよ!」
訴え始めた。
仁王はどうでも良いんですね。
「ちっ、今日のことユキちゃんにチクったら仁王とデキてるって噂を流してやる!」
山田さんは脱兎の如く逃げていかれた。
神崎が私達を巻き込んでいるのか、それとも私達が神崎を巻き込んでいるのか、どちらにしろ神崎が禍を呼ぶのは確実だろう。
はぁっと溜め息を吐いた。
- 18 -
前 次