「はる、ダメよ。」
アンタが雅治の名前を気安く呼ぶな!
「栄子、好いとうよ。」
雅治、愛を囁く相手を間違えているわっ!
山田なんがじゃなく、私に愛を囁くのよ。
ねえ、あの日みたいに私を映してよ。
今なら許して上げるわ。
私も大好きよ、雅治。
「ふふ、ふは、愛を乞うているよ、はる。彼女の愛に答えてあげないのかい?」
この私を嘲笑う山田!
ふん、こんな屈辱も直ぐに終るわ。
だって雅治は私を選ぶに決まっているもの!
「何か言っておやりよ、はる。」
解っているわ。
こんな最低な女に掛ける言葉なんて出てこないもんね!
「ピヨ」
ふふ、あんなの庇わなくても良いのよ?
「おや、解っているじゃないか。神崎はもっと頭の目出度いアホだと思っていたよ。」
………勘違いも此処までくると凄いわね、山田。
アンタ程度の女が雅治の隣に立てるはず無いでしょう!
何よ、その哀れんだ目は!
「いやいや憐れんでいるんだよ。神崎はアホではなく馬鹿だった。私にも予想外な展開だ。」
ノンストップにべらべらと喋り出す山田。
「救いようの無いと奴だとは思ってはいたが、此処まで跳んでいるのは凄いな。流石電波!」
ナニ喜んでるのよ?
「はるの隣に立つ奴なんて決まっているじゃないか?神崎、本気で自分がはるに相応しいと思っているのかい?」
嘲笑と侮蔑、軽蔑を混ぜた眼で山田は私を見た。
雅治、どうして庇ってくれないの?
こんなにも貴方が愛す私を傷付けているのに!
「はるの隣は柳生の物よ!私達女が入る余地は無いのよ。」
「プピーナっ!!」
「うっさいわね!」
悲鳴?を上げた雅治をベシっとしばく山田。
「女と云う生き物に不審と不快を抱き、且つ自分よりも美人な奴と云えば何時も隣にいるパートナー。」
「ピヨーー(泣)」
「起つモノも起たなくなった今日この頃、隣にいた柳生に起った!何てこったい!どうした?我が息子よ、と問い掛けるが息子は素直。そして俺は考えずに行動した。結果テニスのパートナーは人生のパートナーにクラスチェンジしたのです♪」
「プリーナ!」
馬鹿にしてるの?
誰がそんな与太話を信じると思うの?
雅治や柳生が愛しているのは、この私只一人よ!
「だってさ、はる。自分でちゃんと言えば?」
隣にいる雅治に目配せする山田。
雅治、私は良いの。
何か理由があるのよね?
私はちゃんと信じているわ。
怒らないし、恨まないから言って?
あぁ、雅治やっと言ってくれるのね。
山田じゃなく、私が雅治に相応しい女だって!
「キモいんじゃ。」
は?
「神崎を恋人にした覚えなんてなか!」
何言って?
「電波は幸村だけにで良か。神崎、お前は何じゃ?」
どうしてそんな嘘を言うの?
「嘘じゃのうて、真実じゃ。キモいぜよ。俺の目の前から消えろ!」
あぁ、可哀想な雅治。
山田に言わされているのね。
でも安心して、いつか山田から解放してあげるから其れまで待っていてね!
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