転職 プログラマー A子さんのオセロゲーム | ナノ






「何だこれは…」

部活の時間になっても部員が来ない。

レギュラーの一部が休部やサボりはあったのだ。

それでも平部員は毎日テニス部に来ていた。

「何故、誰もいないっ!」

苛立ち紛れに壁を殴る。

ダンと壁悲鳴を上げるが俺は、この状況を打破したかった。

此処には柳生、柳とマネージャーの神崎と俺の4人しかいない。

「物に当たっても仕方の無いことです。」

冷静な柳生の言葉が余計に苛立ちを煽った。

「大丈夫?真田君。」

心配そう俺を見る神崎を見て少し冷静になる。

「精市に連絡してみよう。」

ノートをパラパラと捲り何やらノートに書き込んだ後、柳は精市に電話を掛けた。

数回目のコール音、これで出なければ別の奴に掛けようかと思った矢先

『何の用?』

心底不機嫌そうな態度の精市に

「どうして部活に出ない?今どこにいるんだ?」

部活に出ない理由と現在所在地を聞く。

『その前にいくつか質問しても良いか?』

「構わないが…」

『ふーん、マネージャーはそこにいる?』

唐突な精市の質問に何の意味が込められているのか解らず

「いるがそれがどうかしたのか?」

『平部員は来てる奴いるか?』

俺の質問は華麗にスルーし、精市は質問してくる。

フリーダム過ぎる精市の態度に突っ込みを入れるのも無駄なので質問に答えるだけにしておこう。

「いや、全員休部している。」

あの駄目顧問、全員休部許可するとは思わなかったぞ。

『へー、じゃあ、部活に来ているのは真田、柳生、お前とアレか?』

部活には厳しい精市が全員休部にも反応しない。

憐れまれている感がどうしても否めなかった。

『柳のノートには神崎のって書かれていたっけ?』

唐突な質問に俺は神崎の情報を集めたと思われるページを見た。

「………」

『へぇ、やっぱり書かれてないんだね。もー良いよ、知りたい事は済んだし。』

プツっと電話が切れる。

「柳、幸村は何て言ってた?」

空気が読めない真田に俺は溜め息を吐いた。

精市達が来ないのは神崎メイルが原因らしい。

本人を目の前にて言えるわけもなく

「いや、何点か質問されて切れた。」

溜め息を吐いた。

怒り狂っている真田を他所に

「悪いが今日は帰らせて貰う。人がいないのでは、部活にならないからな。」

その場を後にする。



俺は白紙のノートを見つめた。

データを集めるのが趣味な俺は、何かしらデータを取っている。

神崎メイルについて真っ白なノートは不自然に思えた。

そもそもあの程度の容姿で俺達全員が同時期に恋に落ちるだろうか?

答えは否。

性格が特別素敵な訳でもない、その辺にいる同級生と同じなのに

「まるで催眠術を掛けられているようだ。」

ポツリと言葉が零れ落ちた。

結論付ければ神崎に向けられた心(ねつ)が一気に冷める。

記憶を辿れば神崎の行動は不可解で奇妙だった。

神崎を取り巻くことが、そうあるべき正しい行為(もの)のように俺達の意思と関係無く位置付けされていたら?

山田栄子が崩した事により、異常だった神崎シンドロームに終止符を打ち、否応なしに現実を突き付けられたから彼等は彼処へ来なかったのではないだろうか?

突き付けられた現実に俺は恐怖した。

俺の予測が正しければ、山田栄子が神崎メイルを虐めた事に対し俺達を使って逆に山田栄子を虐めと云う名の制裁させられていたと考えても良い。

思いもよらない山田の反撃で、神崎が造り出した理想の世界は徐々に崩壊し始めたのが妥当な答えじゃないだろうか…

山田栄子と話をしてみなければ、俺達の先は無いと思った。






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