ポロリと涙が流れる。
私が歩くだけで嘲笑され、穢れた存在(もの)を見るかのような侮蔑と嫌悪の視線が突き刺さった。
どうして?
どこからおかしくなったの?
一生懸命記憶を辿ってあることに気付く。
「山田栄子…」
そう、私を虐めていた主犯の少女と皆が遇ってからだ。
確かに暴力を振るわれたりされた事はない。
でも、悪意のある言葉をぶつけられた私を虐めたのは間違いなく山田だ。
「ふっは、惨めったらしい姿だね、神崎さん!邪魔だから道を開けてくれないか?」
後ろから山田栄子が嘲笑しながら私に話し掛けた。
「ど、どうして私を虐めるの?何か山田さんにした?」
眼に一杯の涙を浮かべ同情を集める。アンタなんて皆に嫌われれば良いのよ!
「は?何か勘違いしてないかい?確かに私は君が嫌いだよ神崎さん。だが、一度でも君に危害を加えていないよ。」
馬鹿にした眼に私はカッとなって
「私が皆と仲が良いから嫉妬してるんでしょ!醜いわ!」
と吐き捨てると
「醜いのは貴女ではなくて?さっきから随分と栄子さんに対して無礼な発言の数々、到底赦せるものではありませんわよ。」
山田の隣にいた女が冷たい眼で私を睨んだ。
「な、何よ!アンタ達なんて精市達に相談して後悔させてあげるんだからっ」
そうよ、あの時は失敗したけど今度こそ精市達に成敗して貰うんだから!
山田はクスクスと嘲笑(わら)い見下した眼で
「相談してごらんなさい。ふふ、期待してるよ…お姫様!冷涼、サッサと移動しようか。笑いで私の腹が捻れてしまう前に退散したい。」
隣にいた女にそう告げると冷涼と呼ばれた女は
「笑い死にするのは構いませんが、仕事をしてから死んで下さい。」
バッサリと言い切った。
何なのこの二人!
まるで眼中にもないと粗雑な扱いに苛立つ。
だからこのやり取りがあんな悲劇に繋がるとは思っていなかったの。
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