ボンゴレの婚約者候補が集められる。
ボンゴレは俺にとって兄のような人で、幸せな結婚をして欲しいなと思っていた。
マフィアでボスである以上は難しい事は百も承知だけど。
リボーンには甘いと馬鹿にされるんだろうなぁ。
マフィアの令嬢は大概甘やかされて我が儘だ。
それでもボンゴレの婚約者候補だから守護者がエスコートする事になった。
他の令嬢はとっくにボンゴレに来ている。それに反してロッソファミリーの令嬢は時間ピッタリに来た。
動きやすいベージュのスーツ姿にキャリーバック一つと軽装でビックリした。
普通ならもっと着飾って、荷物も多いのに彼女は必要最低限しか持ってきていない。
それでもずっと前から着ていた令嬢達よりも遥かに品があった。
ユルリと一つに纏められた髪は太陽のようで、空色の瞳は柔らかな彩(いろ)で見惚れてしまう。
だから彼女の仮部屋になるあの場所に案内しないとダメなんだって思うと憂鬱になる。
どんな嫌がらせ?
って思ったもん。
カラカラとキャリーバックを引く音が廊下に響いた。
マリア・ロッソに宛がわれた部屋は物置ぽく見える。
実際、物置なんだと思う。
小さいキッチンに簡易ベッドとクローゼットにソファーがあるぐらいだ。
埃も被っているし、汚い。
俺が思うんだからマリアさんも物置って思ってると思うよ。
八つ当たりとかされるかなぁ?
少し冷や汗がタラリとほほを伝って落ちる。
でもそんなのは杞憂に終わった。
「案内有難う御座いますね。お礼にもなりませんがコレ貰っていただけませんか?」
マリアさんは、ポケットから葡萄味のキャンディーを取り出し、俺にくれた。
明らかに物置小屋ぽい部屋なのに罵られるわけでも、部屋替えを要求するわけでもなく、ニッコリと太陽の様な笑顔でお礼と葡萄の飴をくれた。
何て優しい人なんだろう!
もし叶うならもっと色々と話をしてみたい。
マリアさんは、ボンゴレに居るのだから沢山通えば良いよね。
グルグルと纏まらない思考にお礼も自分の名前を知って貰うチャンスも自分で潰しちゃった事に気付いたのが、物置小屋の扉が閉まってからだった。
…ランボさん、負けない。
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