正義は幾通りもある。
私が妻にした女性は、聡明な人だった。
人の噂など中てにならないものだと痛感する。
私の正義があるようにリムスレーア様の正義があった。
この国が統率が取れなく脆弱しているのを理解(し)っており、国を改革(か)えて行くよりも早く滅ぶ可能性が高い事を危惧されている。
父の正義はリムスレーア様の前で屈する事になるだろう。
私の正義はリムスレーア様の前で消えたのだ。
国を滅ぼすし、ファールーシュ殿下に未来を託す事を選んだリムスレーア様。
家族を愛し、民を愛し、国を愛したリムスレーア様は、己が愚王と成る事で正義を貫くことだろう。
「逝くのですか?」
私の言葉にリムスレーア様は
「逆賊を討たねば国の威信に関わろう。」
鈴の音を転がしたように笑った。
そしてふと思いついたのか
「もっと違う出会いであれば、そなたとは良き友になれただろうに、残念だ。この遠征が終ればお前は夫ではない。好きな所へ行くが良かろう。」
紛れも無く自分を案じた言葉を送る妻。
新女王親征にてリムスレーア様は、ファールーシュ殿下と戦い正義を貫かれ亡くなられた。
ファールーシュ殿下がファレナの象徴を宿した事はリムスレーア様の正義の象徴。
黎明軍は勢力を増し、太陽宮はファールーシュ殿下のによって取り戻された。
「おめでとう御座います、と祝辞を述べれば良いのでしょうか。」
主のいない玉座の隣で私はファールーシュ殿下と対峙する。
「逃げなかったのか…」
そう呟いたファールーシュ殿下に
「私の王はリムスレーア様だけですので。」
愛した女性は別の人だった。
しかし忠誠を誓ったのはリムスレーア様だけなのだ。
例え偽りの夫婦であったとしても私の正義を貫こう。
「さぁ、決着を着けましょう!」
私の屍を越えて貴方の正義を見せて下さい。