継承
リムスレーアが宿した太陽と黄昏の紋章が僕に宿った。




「リムスレーア様、また此処にいらしたのですか?」

女王騎士のアレニアを振り返るリムスレーアは

「ソルファレナを一望出来る場所だからね。」

慈愛を浮かべ優しく笑った。

アレニアは

「何れリムスレーア様が治める国で御座います。」

穏やかに告げる。

リムスレーアは

「アレニア、ファレナ女王国をどう思う?」

ポツリと呟いた。

アレニアは

「素晴らしい国です。」

ハッキリと言い切る。

その言葉にリムスレーアは

「私は正直判らない。身内殺しを平気で行う女王家。国を作った最初の人が女と云うだけで王子には継承権を持たせない悪習。私はこの地に住まう民の暮らしを知らぬ。そのような無知な子供を次期王にする国がおかしいと思うのは、私が異常なのだろうか?」

厳しい眼で美しいソルファレナを見ていた。

「無知は罪なり、知は空虚なり、英知持つもの英雄なり…」

ソクラテスの残した言葉を紡ぐリムスレーアの意図が解らないと云うようにアレニアがリムスレーアを見つめる。

「さっきの言葉はね、実践を含めた行動的知識の事なのだよ。箱庭で美しいモノしか知る事の出来ない私が治める国には未来がない。そして民の暮らしを知らぬ私がこの国を良い国だと公言する事も出来ない。」

リムスレーアはアレニアを真っ直ぐと見つめ

「アレニア、私はファレナの礎になろうと思う。最期まで味方でいてくれるか?」

静かに問う姿は凛とし神々しい。

「リムスレーア様のお心のままに…このアレニアの主は生涯リムスレーア様、ただお一人で御座います。」

アレニアは女王にする跪拝を王女であるリムスレーアにし忠誠を誓った。



朱に染まった幼い妹。

太陽の紋章が見せた記憶。

ずっと、ずっと、小さな頃から自らの死で国を変える覚悟をした妹。

ゴドウィンを倒せば失ったモノを取り戻せると信じていた。

でも違った。

取り戻すことなんて最初から出来ないのだ!

最初から選択肢は二つしかなかったのに…

民を選ぶか女王家を選ぶかの。

父上と母上は女王家を選び、リムスレーアは民を選んだ。

事切れたけれどまだ温かいリムスレーアの骸を抱き締め

「リムスレーア、僕も民を選ぶよ…」

決意する。

あぁ、周囲の声が煩わしい。

誰よりも美しく気高きファレナ女王であったリムスレーア。

君が唯一認めた騎士が素晴らしい国だと言って貰えるような国を創ろう。




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