灼熱の太陽

ギゼル・ゴドウィンとの婚約の日、父上と母上は死んだ。

父として、母として立派だった二人。

環境が違えば良き政務者だったろアルシュタート女王陛下。

私は二人の死を織(し)っていながら見殺しにしたのだ。

腐敗した国を立て直すよりも壊して造り直した方が早い。

ゴドウィン卿がファレナを軍事国家にし繁栄を願うように私はファレナに巣食う貴族(うみ)を血で持って切り捨て新しい国を創るつもりだ。

醜悪な因習と血で染まった玉座を私と云う剣で切り捨てよう。

太陽の紋章は封印の間に戻った。

ファールーシュ兄上達が逃げ延びたと聞いて安堵する。

私が知る未来は確実ではないのだから…

「リムスレーア様は泣かないのですか?」

ギゼルの言葉に私は

「泣く資格など無いのだよ。」

そう答えれば怪訝そうな顔をした。

「…何故ですか?」

尤もな疑問に

「ファレナを滅ぼす、と言えば私の首を斬るか?」

私は自嘲(わら)う。

ギゼルは一瞬だけ目を見開き驚いたが直ぐにいつものポーカーフェイスに戻った。


程なくして私は太陽と黄昏の紋章をこの身に宿した。

母が苦しんだ真の紋章の呪いは私の精神(こころ)を蝕んで行く。

灼熱の太陽(のろい)に諍いながら迎えた戴冠式。


道化はどちらなのだろう?

私か、ギゼルか…その両方か…




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