皆、僕の妹を我儘で傲慢な時期女王だと言う。
本当にそうだろうか?
確かに僕も我儘な妹だと思っていた。
リムスレーアに解雇されたメイドや騎士、庭師達は別の場所で再就職させている。
僕が仕事を斡旋しているのは暗黙の了解になっていた頃に気付いた。
時期王女だからと傲慢な命令を続けられる筈がない。
だからよく観察してみた。
解雇される者達は皆優秀な者ばかりで、新しく入れられた者達は普通なのだ。
新人のメイドが粗相をしてもリムスレーアは一瞥するだけで素通りする。
そしてクビにするどころか厳しく教育するように命じた。
そして優秀になれば解雇し、僕が再就職先を探すという形になっている。
周囲の評価は妹よりも僕の方が高い。
それがリムスレーアの狙いなのではないか?
そしてそれを決定付けたのは貴族の僕への悪口。
「いやはや王位継承権も無い王子殿下をいつまで野放しにしておくのでしょうねぇ。」
「キッシュ殿、いらない存在でも国の為に役に立つまでは手元に置いておけば良いと思いませんか?」
クスクスと下種な会話をする貴族達に
「ほぅ、中々面白い話をしておるのう。」
護衛であるミアキスを連れずに声を掛けたリムスレーア。
幼いとはいえ次期女王であり仲が良いとは言えないが家族である自分を貶める発言に対し貴族達は顔を青ざめた。
ニッコリと笑顔を浮かべるリムスレーアに貴族達は安心したのか
「リムスレーア姫様、ご機嫌麗しく存じます。ミヤキス殿はどうされたのですか?」
何事も無かったかのように振舞う。
「たまには一人で散歩するのも良かろう。そなたらはファレナ女王国をどう思う?嘘偽り無く述べてみよ。」
リムスレーアの言葉に気を良くした貴族達は鬼の首を獲ったかのように僕の事や母上が行う善政を悪し様に口に出した。
全てを聞き終えたリムスレーアは彼等を咎めるわけでもなく
「面白い話であった。去る良い。」
退出させる。
去った貴族を睨み付け
「我が愛する家族を侮辱するとは、ファレナ女王家も馬鹿にされたものだ。王に相応しき資質ある者を見極める事も出来ぬ旧い因習など棄ててしまえば良いものを…」
怒気を交えた溜息雑じりの言葉。
あの現場を目撃した半月後に侮辱していた貴族がファレナから消えたらしい。
リムスレーアが謂う王に相応しき資質ある者とは誰なのだろう?
リムスレーア自身の事ではないのだろう…
全てを与えられている妹が持っているモノがまやかしである事を知るのは全てが終ったあとになる。