マルクトの首都グランコクマの王宮にある謁見の間に私達はいた。
キムラスカの親善大使の名に恥じない振る舞いをしている自負はある。
和平も順調に結ばれるだろうと誰もが確信していた所に
「失礼しますよ。」
慇懃無礼な根暗マンサーの声と同時に謁見の間が開かれた。
ズカズカと入る罪人達に控えていたマルクト兵達や重鎮達が殺気立つ。
いやいや、お前等ってば牢屋に打ち込まれたんじゃなかったのか?
おいおい、マルクトの警備はどうなっている!
と隣で般若を背負うシアン(被験者イオン)に冷たい眼で幼馴染であるピオニーを見るディストとシンク。
背後に黒い靄が出ているイオンとアスランさんに私は引き攣った笑いを漏らした。
臣下の礼を取らない根暗マンサーや一国の王に対し平然と立ったままの似非軍人と偽姫とデコ。
おい、偽姫とデコよ!
お前等は一応、仮にも一度は王族として教育された身なんだろ!?
此処がどういう場所でお前等が罪人というのを抜かしても礼を尽す必要がある事ぐらい理解出来ないのか?
どっちが劣化しているんだ!
と叫びたい気持ちになるのは致し方ないと思う。
そして何故かアスランさんに熱い視線を送っているゴブリンは人間でないので私は意識を宇宙の彼方にやったのは悪くない!
「ジェイド、何でお前が此処にいる?」
冷たい眼でピオニーが根暗マンサーを見た。
根暗マンサーは彼の視線を物ともせず
「緊急を要しましたので、礼を失した事については申し訳御座いません。ですがアクゼリュスの真相について、またその他にも報告がありましたので。」
淡々と答える。
虚偽の報告をされたら困りますからねぇ、と明らかに私達を侮辱する言葉に唖然となった。
根暗マンサーの言葉を皮切りに次々と
「そーですよぅ!そのお坊ちゃんがアクゼリュスを崩壊させた大罪人なんですよ〜どーして私達が我儘お坊ちゃんの代わりに捕まらなきゃならないんですかぁ!?」
「ルークは兄に騙されて超振動を使ってパッセージリングを破壊したんです!罪を償うのはルークです!」
「一万の民を殺した罪人を何故捕らえないのです?」
妄想癖の激しい元・ダアトの似非軍人と偽姫がギャーギャーと喚き出す。
剣を抜こうとした兵達にピオニーが制止し
「お前達の言い分は、親善大使であるルーク殿がヴァン・グランツに“騙されて”超振動を使いアクゼリュスを崩壊させマルクトの民を殺した…と言いたいのだな?」
確認を取った。
「そうですわ!」
「間違いありません。」
「そうに決まってますぅ!」
「屑がそう言ってるだろーがっ!」
「まぁ、そういう事ですね。」
と次々に肯定していく馬鹿共に私は溜息を吐く。
こいつらユリアシティでの事を忘れたのだろうか?
ピオニーの顔から表情が抜け落ちた。
あぁ、マジで怒っているな…と他人事に思いつつも傍観する。
「ほう…それはおかしな事だな。」
ピオニーの言葉に非常識軍団は顔を歪めた。
彼等が口を開く前に
「マルクトは勿論の事、キムラスカでも超振動は確認されていない。」
そう断言したピオニーに各々が反発の声を上げる。
「マルクトは譜業が盛んではありませんもの。きっと何かの間違いですわ。」
マルクトを思いっきり馬鹿にしている偽姫ナタリアの言葉に私は勿論、ピオニー含めマルクト側も引き攣った顔をした。
根暗マンサーだけは沈黙をしているが…
「仮にだ…ルーク殿が超振動を使ったとしよう。ヴァン・グランツに“騙されて”超振動を“使わされた”ルーク殿はいわば被害者だ。罪人はヴァン・グランツだと何故分からない?」
氷点下極めたピオニーの言葉に
「だからルークが超振動を使ってアクゼリュスを落としたんですのよ!」
「そーだよ、何で罪人を庇うの?頭悪いんじゃない?サイテー」
「どうして兄が罪人なんですか!?」
と口々に文句を言う彼女達に
「恐れながらピオニー陛下、発言の許可を頂けますか?」
仕方がないから私がピオニーに発言の許可を得て断罪する事にした。
「構わないぞ。言葉もいつも通りで構わない。」
許可を出したピオニーに私は笑顔で礼を述べ罪人達に向う。
「元ダアトのコスプレ軍人の誘拐犯とスパイの元導師護衛役、偽姫メリル・オークランドにタルタロス並びにカイツール襲撃犯の大罪人の鮮血のアッシュ、自称和平の使者殿は人間として劣化しているのだな。」
嘲笑と侮蔑を込めて皮肉を言う。
真っ赤になって怒鳴ろうとする彼等に
「此処が何処で、一国の王の前で、脱獄し虚偽の報告とは…お前等は俺がどうやって超振動を使ったと?それを目撃したのか?14坑道に行かずにタルタロスに居た俺がどうやってパッセジーリングを破壊する事が出来た?」
理路整然と真実を突き付けてやれば見苦しくも言い訳をし始めた。
「劣化軍人、ダアトの恥晒しが口を開かないでくれる?」
シンクの辛辣な言葉に続き
「傲慢で無知で我儘な中身が子供な彼等には理解出来ないのではないですか?」
イオンが毒を吐く。
「仕方有りません。生きている価値もない存在なのですから。」
シアンが嘲笑し
「そうですの!民間人に守られる事も恥と思わない劣化した軍人と傲慢で羞恥心の欠片もない王族を名乗る恥晒しがご主人様を悪く言わないで欲しいですの。言葉が穢れますの!」
子チーグル愛らしい容姿とは懸離れた侮蔑の言葉と共に
「ミューフィヤーーーーーーーーーー!!」
怨嗟を雑ぜて吐き出されたミュウファイアは非常識軍団を丸焦げにした。
人間の掟をマルっと無視する良い根性をしている子チーグルはトドメとばかりに
「ミューアタックゥウウウウウウウウー」
渾身の一撃を喰らわせる。
岩も砕くミュウアタックを喰らった彼等は瀕死の状態ではあったが誰も助けようとしない。
そのまま憲兵に簀巻きにされて牢屋へ逆戻りしたのは言うまでもなかった。
罪の所在が何処にあるか彼等は身を持って知った事だろう!