あの非常識メンバーから解放され、新たなパーティメンバーでの旅は快適だった。
六神将はダアトの汚点である奴等に対し生き地獄を味わわせている事だろう。
キムラスカでは偽姫ナタリアは反逆罪として処刑されるのは確定済みだし、アッシュにしても王族の血を残す為に種馬として一生地下で幽閉される事になる。
良識人からは人外と認定されたゴブリンについては最早何も言うまい。
私と似た世界から来た彼女の思考回路は、私の斜め上を行くのだ。
しかし何故か牢屋に入れられていたはずのゴブリンは、私達の行く先々に出没する。
これが特典なのだろうか?
夢小説とかであるよね…
と私は遠い目でゴブリンを見た。
隣に居るアスランさんも現実逃避をしている。
此処数回の遭遇で分かった事だが、ゴブリンはアスランさんが好きなようだ。
何というか…ご愁傷様といえば良いのだろうか?
イオン達もゴブリンのお気に入りだったようだが、辛辣な言葉とキツイ拒絶で方向転換したらしい。
私も主役キャラなんだけどモーションを一度もかけられたことがない。
どんな基準で選んでいるのかは謎だ。
ゴブリンと遭遇し、撒いて宿へ逃げ込んだ私達はそのまま一泊する事に決まった。
ゴブリンは金を持ってない筈だから野宿でもするのだろうか?
部屋割りは私とアスランさん。
緑っ子三人組、ガイとディスト、アリエッタとジョゼットで綺麗に部屋別けされた。
グッタリとしているアスランさんに私は
「大丈夫…じゃないよな。グランコクマに戻っても良いって言えなくてごめん。」
マルクトの代表として降下作戦に参加して貰っているのだから私の独断でマルクトへ帰すわけにはいかなかった。
帰せても不名誉なレッテルを貼られるのが落ちである。
ゴブリン如きにそんなレッテルを貼られるのは絶対に嫌だ。
「ハルキ殿が気に病むことではありません。私なら大丈夫です。」
気丈にも大丈夫だと言うアスランさんに私は
「アスランさんに恋人がいればゴブリンも諦めるかも!」
丁度良い機会だとばかりにジョゼットを恋人役にどうかと提案してみた。
アスランさんは少し考えた後、物凄〜く良い笑顔で
「そうですね、愛する人がいれば諦めてくれますよね。」
ニッコリと笑う。
これがキラキラスマイルってやつかと関心している私に
「ハルキ殿が恋人役をしてくれるんですね。有難う御座います。」
ニコニコと爆弾発言を投下した。
え?
何で私なわけ!?
カチーンと固まった私を余所にアスランさんは今後の対策をサクサクと立てて行った。
私が反論する余地もなく、いつの間にか
「妖怪を欺く為とはいえ、ハルキ殿が私の恋人役をしてくれるなんて凄く嬉しいです。」
恋人役が確定する。
これぞ人は開き直りという。
人間とことん追い込まれたら開き直るのだな…
フリセシは何処に行ったんだろう??
私の心の在り処を模索することになる。