余程預言を成就させたいようだな。
「ルークよ、そなたには和平の親善大使としてアクゼリュス救済に向って欲しい。」
インゴベルト六世の王命に
「お言葉ですが陛下、私は外交経験もありません。私では力不足ではないでしょうか?」
やんわりと断ると樽豚(モース)が
「ルーク様がアクゼリュス救済に向われる事は預言で定められておられるのですよ。」
シャシャリ出てきた。
父上背後に般若が見える。
謁見の間に居た兵士や他の貴族達もモースの言葉に苛立っているようだ。
心情としてはいつからキムラスカはダアトの属国になったんじゃいっ!
とこんな感じだろうか?
「そうじゃぞ、ルーク。そなたがアクゼリュスへ行く事は預言によって定められている。行ってくれるな?」
どんだけ目出度い頭をしているんだ、このおっさん。
父上我慢ですよ!
マジ切れ寸前の父上に大丈夫と笑って
「私がアクゼリュスへ行く事に条件を付けても宜しいでしょうか?」
インゴベルト六世に向き直った。
インゴベルト六世は私が出す条件など対したことではないと思っているのだろう。
「何でも言ってくれて構わないぞ。」
と大盤振る舞いした。
「それでは先ず一師団をお貸し下さい。」
一師団気前良く貸せやーと言えば、まさかそんな事を言われるとは予想もしてなかったようで
「一師団もか!?」
驚いた顔を愚王。
「アクゼリュスには一万の民がいると聞きます。私は慰問ではなく救済する命を受けました。一師団でも少ないと思いますが?それと万が一ではありますが、アクゼリュスで私が命を落としたとしてもマルクトに責はありません。開戦など愚かな事はなさらないですよね。」
ニコニコと止めを刺す私の言葉に
「いや、それは…」
真っ青な顔で必死になって言い訳をしようとする愚王に
「何か間違っておりますか?本来であれば瘴気が溢れているアクゼリュスの救済は兵に任せれば良い事でしょうにマルクトに和平の意思を示す為に王族である私が救済に向うのですよね。なら、アクゼリュスで私が瘴気に中てられ命を落としても罪はキムラスカにあるという事です。」
追い討ちを掛けた。
正論過ぎて何も言えないってか?
「解った。そ、それではアクゼリュスの救済を頼んだぞ、ルーク。」
「御意。」
私は一礼して謁見の間から出た。
ジョゼットの部隊には戦艦ガイア、ファブレ家で私専属のお抱え部隊の黎明には戦艦ノア、黄昏は私と一緒に直接アクゼリュスへ向う手筈となった。
砂漠越えなんてしないけどね。
それと何故かヴァン・グランツとティア・グランツが釈放され一緒に連れて行く事に対しガイやジョゼットが殺気立ったのは言うまでも無い。
ヴァン・グランツに関してはアンチフォンスロットを何重にも掛け捲ってやった。
大体罪人を野放しに出来るか!
そのことについては宇宙人ティアが非難していたが軽くスルーだ。
面倒事はまだまだ続くらしく偽姫ナタリアが王命に刃向かい着いて来た。
莫迦だと思っていたがこれほど愚かだとは思わなかった。
厄災は続きイオンが攫われたから『ついで』でも良いから探してくれとアニスに迫られたり!
それに対しティアと偽姫ナタリアが助けに行かなくちゃ等と頓珍漢な使命感を燃やす。
これに関してはジェイドも何言ってんだコイツは?
みたいな軽蔑の目をティア達に向けていた。
馬鹿共は放置してカイツールにて物資を調達し責任者であるアルマンダイン伯爵と今後の打ち合わせをする。
地獄絵図と云う言葉が相応しいだろう。
瘴気塗れになったアクゼリュスの大地。
ディストに開発させていた薬が間に合って本当に良かったと思う。
私達の到着を待っていたマルクトの銀の軍人、アスラン・フリングスが出迎えてくれた。
「私はマルクト帝国軍第二師団長のアスラン・フリングスです。ルーク様、アクゼリュス救援心より感謝申し上げます。」
毅然と礼を取るアスランを立たせ
「挨拶は後で、救助はどれぐらいまで進んでいるだろうか?」
状況を確認する。
「導師イオン様の力添えで神託の盾騎士団の手を借りて三分の一避難が終わった所です。」
思ってたよりも避難が遅れているようだ。
私は率いてきた兵達に
「人名救助する際は必ず手袋を着用すること。勝手な救助活動は違反とし処罰対象とする。重傷者はガイア、軽症の者はノア、影響の出てない者達はタルタロスへ!絶対に回復譜術しない事。回復薬もしくはグミで対応する事を義務付ける。」
指示を出す。
先に救助をしていたアスランやシンク達をタルタロスへ連れて行く。
勿論、物資の補給や詳細な状況報告を聞くためでもあった。
が、コスプレ軍人ティア、偽姫ナタリア、なんちゃって導師守護役のアニスが文句を撒き散らす。
「イオン様を攫った六神将がどうして此処にいるのよ!」
アニスの見当違いな言葉に私達や周囲の兵はコイツ話を聞いてなかったのか?
と呆れた視線を投げかけた。
「俺達は正式に導師イオンの正式な命令で救済活動をしてるんだよ。」
シンクはウンザリとしたような顔で説明するが
「嘘よ!一体何を企んでいるの?兄さんの手先の癖に!」
KYティアの発言にオラクル兵の顔も引き攣った。
コイツはダアト最高指導者を馬鹿にしている事に気付いてないのだろうか?
「そうですわ。散々和平を邪魔してきた六神将を信じるには無理があります。ルーク、彼等を拘束なさいませ。」
ナタリアの明後日の方向に飛んでいる正義感に俺はシンク達に土下座して誤りたくなった。
「お言葉ですが、導師イオン様よりアクゼリュス救援の協力に関しては親書を受け取っております。また、シンク殿達は口だけの貴女方よりもアクゼリュスの民の為に尽力を尽くしてくれてます。これ以上、彼等を侮辱するのは止めて頂けますか?」
ニコニコと笑顔だが目が笑ってない絶対零度のアスランのキツイ言葉に非常識人は口を閉ざした。
「シンク殿、オラクルの誇り高き騎士の方々、アクゼリュス救援の協力感謝する。また(物凄く不本意だが)彼女達の心無い言葉に関し私の謝罪で許して頂けないだろうか?」
三馬鹿の内一人は一応キムラスカの王女。
あとの二人はダアトの人間だけどね。
私の対応に
「ルーク様が謝罪する必要はありません。」
シンクが謝罪は不要と言い切りアニスとティアを睨み付け
「ダアトの面汚しに関しては救済が終わりましたらキムラスカへ引き渡します。今はアクゼリュス救済を急ぎましょう。」
毒を吐いた。
ティアとアニスは顔を真っ赤にして怒り出し、ナタリアに関しては二人を擁護する始末。
埒が明かないと思い右手をスっとあげるとキムラスカ兵がティアとアニスを拘束し牢へ放り込んだ。
ついでにナタリアも私達から引き離されたのは言うまでも無い。
煩いのがいなくなったので私達はサクサクとアクゼリュス救済活動を再開させた。
ほぼ9割避難出来た所で兵の一人が
「第14坑道にまだ人がいるとのこと。それと大変申し上げ難いのですがグランツ兄妹とアニス・タトリンがナタリア様の手引きで牢から出ております。」
凄い爆弾を落としてくれた。
「ユリアの譜歌ですねぇ。」
ナイトメアを使ったのだろう。
あぁ、横にいるジェイドから冷気が流れてくるよ。
「手引きしたのがナタリアかぁ…」
どうせ偽姫だし此処で処分しちゃダメかなぁ?
てか、あの馬鹿共何をしてるんだ?
私の気持ちが解ったのか
「ハルキ様、いっそう処分してしまってはどうでしょう?」
とっても良い笑顔のガイに
「後僅かな時間だ。」
その間にどれだけ罪状が増えるかなぁ…と呟いた。
手の空いている者達に第14坑道に人がいないか確認に行かせた所、虐殺された民の姿とヴァン達がいたそうだ。
彼等はヴァン達を捕らえタルタロスに戻ってきた。
そのまま魔界に棄ててしまえば良かったのに…。
避難が完了したのと同時にアクゼリュス崩落は一瞬で崩壊し、魔界へ落ちた。
この後、大罪人と鶏による苦悩と云う名の罪の擦り合いに巻き込まれる。