和平
タルタロス襲撃を受けた際、私は譜術でドアをぶち破った。

血臭に顔を顰める。

辛うじて息のある者にヒールを掛けた。

「状況を説明して貰えるか?」

傍にいた兵士に尋ねると

「神託の盾、六神将より襲撃を受けております。」

簡潔に報告してくれた。

私は残った兵を見渡し

「ローレライ教団が何故襲撃してきたのかは判らないが此処を脱出するのが先だろう。怪我をした者は報告するように。敵国の私の命令に従うのは貴殿等にとっては不本意ではあるだろうが、カーティス殿の合流するまでは辛抱してくれ。」

確認を取る。

マルクト兵達は私の言葉に驚きと戸惑いを見せたが私の意志に沿うと返事をしてくれた。

マルクト兵と共にタロタロスを脱出しジェイド達と合流した時、私がマルクト兵に守られるように脱出して来たのをティアは文句を言いジェイドに到っては自分の部下を見下す始末。

アンチフォンスロットを食らって弱くなったジェイドと民間人以下の戦闘能力のティアに脱出出来たマルクト兵で六神将と対峙するには分が悪過ぎた。

そんな時、ガイが

「ガイ様、華麗に参上!」

タロタロスから飛び降り六神将を蹴散らしていく。

ガイが作ってくれたチャンスを利用し、上級譜術を放った。

撤退した六神将を見送った後、ガイは外面使用で

「ルーク様、お迎えに上がるのが遅くなって申し訳御座いません。お怪我は御座いませんか?」

心配してくれる。

「大事無い。迎えに来てくれて有難う。それよりも邸はどうなっている?」

臣下の礼を取るガイを立たせた。

ガイは襲撃犯であるティアを睨み付け

「警備は建て直しました。あの日、屋敷に居た者達は罰が下っております。またヴァン・グランツに関しては牢に繋がれてます。」

淡々と報告を済ます。

「なっ!あれは事故よ!どうして兄さんが牢屋に入れられなきゃならないの?」

とティアが喚き散らした。

おおぅ、ガイさんよ…頼むから刃傷沙汰は止めておくれよ。

抜刀しそうなガイを制し

「お前が襲撃したのはキムラスカ王族であるファブレ家。そして王位継承者で次期王である俺を誘拐した罪はお前だけで償えるものではない。キムラスカの法に則れば一族処刑されても当然な事を仕出かした大罪人である兄が牢獄に繋がれても不思議ではない!」

懇切丁寧に説明してやったと云うのに

「だから貴方を連れ出した事はちゃんと謝ったじゃない!」

と真っ向抗議。

反省の色すらみれないティアの態度にマルクト兵は真っ青な顔をした。

それもそうだろう。

大罪人を放置した挙句、和平を強要し拒否されたからと拘束した上司の対応に和平どころではなくマルクトはキムラスカに喧嘩を売ったのと同じなのだ。

「ルーク、ティア・グランツ及びタルタロス襲撃した六神将に関してはダアトは一切擁護致しません。キムラスカに引き渡します。我が僕の不始末心よりお詫び致します。ダアトは決してキムラスカに敵意は無い事を分かって頂けないでしょうか?」

イオンがティアを切り捨て宣言と謝罪する。

キーキー煩かったティアが押し黙ったのを見て

「分かっている。しかし正規に和平の使者として然るべき手続きを踏んでダアトを出た導師を何故六神将が『奪還』等と物騒な事を言ったのか…腑に落ちない。心当たりはないか?」

イオンに訊ねると

「手続きを踏む前にタロタロスに乗せられたので…それが原因かと。トリトハイムには和平の使者として赴く事になると文を出してますが、モースによって揉み消されたのかもしれません。」

暗に誘拐されたんだよ!

と怒り心頭に語ってくれた。

マルクト兵は真っ青な顔をしている。

きっと心情はこうだろう。

人間性としてダメだと思っていたが、ダアト最高権力者である導師を誘拐したとなればダアトと戦争になる!

しかもキムラスカ王族に対しての不敬の数々でダアトとキムラスカが組んで戦争が起きるかもしれないって感じだろうか?

私はジェイドに

「ジェイド・カーティス、貴殿は戦争を起こすつもりか?」

と聞いた。

ジェイドは心底莫迦を見るような眼で

「そんなわけないじゃないですかぁ〜」

周囲の視線を何とも思ってないのか余裕な顔をで答える。

私は溜息を一つ吐き

「例えばマルクト皇帝が事故でキムラスカ領地に来て保護を求めたにも関わらず拘束され侮辱されたらどうする?」

現状を説明してやると

「拘束した者の首をキムラスカに送って即開戦ですね。」

平然と答えやがった!!

まだ理解してないみたいだ。

「そう、ホド戦争以上の戦になるだろう。もう一度言う。私はキムラスカの次期王ルーク・フォン・ファブレだ。俺が我儘で無知で傲慢な貴族であればジェイドお前の首をマルクトに送り付け即開戦になることにまだ気付かないか?」

此処まで言ってやっと事の深刻さを理解出来たのか真っ青になったジェイドに

「戦争を起こすのはとても簡単だ。しかし和平を結ぶのはとても難しい。もう一度訊ねる。ジェイド・カーティス、マルクトは和平を結ぶ気持ちはあるのか?」

真意を問えば最上礼をし

「ルーク様、数々の非礼大変申し訳御座いませんでした。謝罪して済む話ではないと思いますが、マルクトは和平を望んでおります。この首で償える事ではありませんが、マルクトに戦の意思のない事を解って頂けないでしょうか?」

謝罪した。

「俺自身に関しては軍人としての職務を果たしてくれれば今までの事は不問とする。和平に関しては俺も賛成だ。だが俺が出来ることは叔父上に取次ぎをするぐらいだがそれでも構わないか?」

「ご温情感謝致します。」

ジェイドはティアを拘束し、イオンに対しても謝罪をした。

まぁ、ダアトからの抗議に対してはタルタロス襲撃で相殺されるだろう。

途中カイツールで鶏が襲撃を起こし、ティアとアニスがコーラル城へ助けに行こうと抗議無視したりとトラブル続きの道程だった。

バチカルに着いてティアはジョゼットによって捕縛され俺は愚王に謁見の取次ぎをした。

モースが我が物顔で謁見の間に居る事にイオンの額に青筋が浮いていたのは気のせいじゃない。

コロコロと加速するように簡単に進む和平を尻目に愚王と偽姫と樽豚以外の人は白い目で事の成り行きを見ていた。


まぁ、偽りの和平を預言で結ぶのだから仕方ないか!




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