ファブレ家の憂鬱
父上、母上を含めファブレ家全員に私がレプリカだと云う事実を公表した。

まぁ、多少の混乱はあったが被験者よりも出来が良く人望もあったのですんなりとファブレ家に受け入れられていった。

うん、健気な幼子を演じていた甲斐があったよ。

そして預言に対しても懐疑的になった。

預言に傾倒している愚王と偽姫につい対してはその内クーデターでも起こすんじゃないか?

私には関係ないが、赤鶏が問題を起こす前に何とか捕獲しておきたい。

それに私の未来の為に六神将は是非とも仲間内に入れておきたいのがダアトに行く本音だったりした。

「父上、母上お願いがあります。私をダアトへ行かせて頂けませんか?」

真剣な眼をして哀願する私に二人は困惑した顔で

「何故かと聞いても良いか?」

政務者としての顔で私に問う父上に

「ダアトに本物のルーク様がいるかもしれないと報告を受けました。ヴァンが連れてきた子供で俺と同じ年頃、キムラスカの王族の証である紅毛だと聞きます。もし彼が本物のルーク様であれば俺が此処にいる事で居場所を取られたと思っているのではないでしょうか?」

私は部下から受けた報告をした。

ダアトへ亡命したかもしれないと云う可能性は伏せたけれども。

「ヴァン・グランツは信用出来ません。事の真相を確かめルーク様を連れ戻します。」

連れ戻しても赤鶏の居場所はないけどね!

神妙な顔をし、さも気遣ってますと云う私の態度にいたく感激したファブレ夫妻は

「ハルキ、そなたは何と優しい子なのでしょう。ルークも私達の息子ですが、ハルキも私達の愛する息子なのです。」

私の身体をギュッと抱き締めてくれた。

「あぁ、シュザンヌの言う通りだ。ハルキ、そなたは私達の自慢の息子だ。危険だと思ったら直ぐに家に帰ってくるのだぞ。」

父は私に誂えさせた細身の双剣と路銀に手形を渡してくれた。

「有難う御座います。」

天使の微笑みで礼を述べれば何故か感涙して泣き出す二人にオロオロと視線を彷徨わせる。

どっちが大人なんだか…



-SIDE 使用人A-


ハルキ様がルーク様を連れ戻す為にダアトへ向われた。

護衛としてガイ・セシルが同行する事になったが心配なのだ。

ルーク様が10才の時に誘拐され、ハルキ様が摩り替えられてファブレ家に来られた。

まるで赤子のようになったハルキ様に対し落胆した者も多かっただろう。

ハルキ様は周囲の悪意ある視線や陰口、粗か様な態度に文句や泣き言一つ言わずに頑張られた。

その甲斐あってかハルキ様は以前のルーク様よりも素晴らしく成長された。

ハルキ様の打ち出された政策はキムラスカを繁栄と導いてくれる希望を見出せるような物ばかり。

ファブレ家が所有する広大な土地を活用して食料の確保の為の品種改良をしプラネットを作って大量雇用をして民の生活水準を底上げした。

血税で贅沢する貴族ばかりの中でハルキ様は料理人達と一緒に買い物をし料理の勉強をする風変わりな人。

一度試しに聞いてみれば

「俺は民の生活を知らない。どんな物を食べて生きているのかも…貧困に苦しむ民を前に贅沢など出来ない。料理は工夫次第で貴族からしたら粗末な材料でも美味しく出来ると思うんだ。俺は貴族だが、その地位に胡坐を掻いていたらこの首を落とされても文句は言えないと思う。だから俺には知る義務がある。」

太陽のような人を魅了する微笑みを浮かべ貴族独特の傲慢さも無く、自分がどの立場にあるか理解して振舞われる様に私はハルキ様に忠誠を誓った。

ハルキ様に忠誠を誓う者は多いだろう。

ハルキ様は相手を気遣える優しさを持つ人だ。

ラムダス様が安易に下々に声を掛けてはと注意されていたが

「人はさ、事実相手に感謝し、心から尊敬の念を感じた時には、自然と頭が下がるものだと俺は思う。そこには身分という壁があっても感じる心を殺してしまえば相手を知る事を放棄する事だと思う。」

そう仰ってラムダス様を言い負かしたハルキ様は素晴らしい方だと思う。

もし本物のルーク様が戻られなくても私は何とも思わないのです。

何故なら私の忠誠はハルキ様にあるのですから…

だからハルキ様、どうか無事にお戻り下さい。





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