-SIDE アスラン-
自分の腕の中で眠っている漆黒の猫こそ、この戦の功労者だった。
戦場に猫がいるのもおかしい話だが、猫が上級譜術をぶっ放す姿は異様だと思う。
負け戦の予感がヒシヒシと伝わる中で黒猫は、戦況を引っ繰り返したのだ。
士気も上がりキムラスカに勝利を治めた時も黒猫はずっと私の傍にいた。
私達騎士が王を守るように黒猫は私を守るように傍で佇んでいる。
功労者である黒猫を抱き上げると黒猫は抵抗せずにニャーと人鳴きし私を含めマルクト兵の怪我を一瞬で治療した。
艶のある漆黒の毛は上質な肌触りで気品が漂う。
「フリングス将軍、これは一体??」
困惑気な部下に私は苦笑を漏らし
「彼女が助けてくれたようですよ。」
腕の中で眠る黒猫を見せた。
「猫ですか?」
驚愕と云った表情(かお)をする部下に
「えぇ、猫ですね。」
ニコニコと笑う。
この際、猫だろうが犬だろうが敗戦の色が濃かった自軍を勝利に導き、徒に死者を出さなかったのは彼女が全力で回復譜術を使ったからだ。
「さて、帰る準備でもしましょうか。」
アスランの言葉にテキパキと動き出す部下達。
あぁ、素晴らしい勘違い。
きっと怠惰な彼女本人が起きていたら吉本のお笑い芸人の如く斬れの良い突っ込みを披露してくれた事だろう。
ただ、言葉が通じるかは微妙ではあるが…
確実に言えるのは、グランコクマで待つピオニー陛下の家畜(ペット)と同じように溺愛される暑苦しい日が待ち受けているという事実だけ。
称号:お猫様