現行ルークEnd

-SIDE アルス-


世界は瘴気に覆われているけれど、ジェイドやディストを中心に作られた譜業によって少しずつではあるが改善されていった。

人々は予言を捨て新たな未来を模索しながら生きている。

ただ緩やかに穏やかに過ぎる時間の中で俺は一抹の不安を抱えていた。

あの日、世界がローレライから解き放たれた時、マリアの瞳には何も映っていなかったんだ。

変わり行く世界の中でマリアだけは遠く、遠く、何処か違う世界を見ていた。

だからマリアがダアトから姿が見えなくなった時、嫌な予感がした。

追い掛けなければ、マリアは戻って来ない。

そんな予感が脳裏を過ぎる。

いつだって彼女は自分の為と言いながら周囲の弱者に手を差し伸べていた。

シュリダンの操縦士であるノエルにマリアがいるレムの塔へアルビオールで向かって貰うように頼み込む。

最初は渋っていた彼女もマリアの危機となればアルビオールを手配してくれた。

マリアがいるだろうレムの塔へ向かう。



やはりと言えば良いのだろうか…

マリアは瘴気中和をしようとしていた。

正に星の剣(エクスカリバー)を地面に突き立てようとしたしたその瞬間

「マリアっ!!」

俺はマリアに手を伸ばす。

マリアを渦巻く音素の重圧に身体が軋みを上げた。

それでも俺はマリアに向けて手を差し伸べる。

驚いたように見開かれた瞳は困惑と悲しみ、様々な感情が入り混じっていた。

「…どうして」

と呟かれたマリアの言葉は声にならず空に掻き消える。

「愛しているからに決まってんだろ!」

好きで、好きで、好きで、愛してやまないんだ。

「マリアが消滅(し)を望むなら俺も一緒に逝ってやる。でも俺はマリアと一緒に生きたい。」

幸せにするなんて約束なんて出来ないけれど、俺の人生全てをマリアにくれてやる覚悟は出来ている。

怯んだマリアの腕を掴んだ時、周囲の音素が掻き消えた。

そしてマリアは崩れ落ちるように意識を手放す。

“娘を星へ還す事を阻むか、作られし者よ。”

グッタリと腕の中で意識を飛ばしているマリアを目の前の存在に奪われぬように掻き抱く。

「マリアは渡さない!」

ギリっと睨み付ければソレは人間で言えば愉快そうに存在を揺らした。

“その娘が望まぬ事でもか?”

「あったり前だ!例えマリアに恨まれても、この星が滅んでも俺はマリアを手放すつもりはねー」

俺に感情を植え付けたのは紛れも無くマリアだ。

「勝手に突っ走って、自分一人だけで背負い込んで、目の前から消えるなんて許さない。」

俺の自分勝手な宣言にソレは

“その女は神殺しの咎を負わねばならぬ。その咎を分ち合うというのか?”

怜悧な声でマリアの罪を突き付けた。

「マリアが生きて俺の傍にいるならいくらでも背負ってやるさ。」

誰よりも残酷で優しい女。

“なら足掻いてみせよ。異端の存在よ、神殺しをした業深き女の罪をそなたも背負うが良い。”
言葉が終わると同時に身体が作り変えられるように軋みだし、激痛で俺は意識を飛ばした。



数十年経過しても俺もマリアも年を重ねる事はない。

俺達の間に出来た子供は老い、孫が生まれ、またその子供が出来る。

一緒の時を歩む事は出来ない。

それが人の領域を犯した者の罪であり、罰である。

けれど俺は後悔していない。

愛する彼女と一緒に生きて行く事が出来るのだから…



-SIDE マリア-



あの日、私は死を覚悟した。

誰の為に生きるでもなく、私は目的を終え結末の代償を払うべく世界の贄(え)になるはずだったのだ。

「アルス」

寄り添うように傍にいてくれるアルスに私は心癒される。

オリジンからアルスが私の咎の半分を背負ったと聞かされた。

人の理から外れた私達。

それでもアルスは幸せだと笑ってくれる。

「マリア、女の子かな?男の子かな?」

子供のようにワクワクとしながらお腹を撫でるアルスに私は苦笑を洩らした。

復讐に囚われ続け、消滅(し)ぬ事だけが私の全てだと信じていた私。

幸せは、とうの昔に手に入れられる事のない存在となってしまったのだと思っていたわ。

でも、アルスがいてくれた。

「私はアルスに似た男の子が欲しいわ。」

きっとアルスに似て優しい男の子になると思うの。

膨らんだお腹を一撫ですれば、アルスが

「俺はマリアに似た女の子が欲しいな!」

きっと可愛い!と太陽な笑顔を向けるアルスに私はクスクスと笑った。

互いの胸に刻まれる咎人の刻印。

いつかきっと哀しみは訪れる。

でも一時の幸せであろうと私は後悔しない。

もう一度、愛する事が出来たのだから……



半年後、マリアに似た朱色の男の子と栗色の女の子が誕生する。

小さな幸せが生まれた瞬間。


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語部少女より

現行ルークことアルスEndは如何だったでしょうか?

キャラの中で一番出番が少なかった彼ですが、一番マリアを愛していたんじゃね?

と思ってます。

互いに理を外れてしまった存在になってしまったけれども悔いはないと思います。

彼らの根底にあるのは激情のような愛ではなく、穏やかな微笑ましい愛です。

オールドラントとは全く別の世界でマリアとアルスとその子供達は生きて行く事になるのだ(笑)

TOVの世界だったら面白いかもしれない?

次回は、アスランEndになります。



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