NORMAL現代End
大地降下、キムラスカ滅亡、ローレライの消滅と世界は慌しく変革の時を迎えた。

古の業により生み出された瘴気はジェイドとディストを中心になって作り上げられた譜業によって徐々にではあるが中和されている。

私は誰にも告げずに星の剣(エクスカリバー)を持ち出してレムの塔へ向かった。

「世界が滅んでも何とも思わないと思ってたのに…」

ふふ、でも大切な存在(もの)が出来るのは悪くないと思う私がいる。

「アーメリア クレッシャリド ヴィ ラー ウィ ラウラ ルーラ リラ アーメリア」

オリジンと交わした契約の唄を紡ぐ。

第一から第六音素が星の剣(エクスカリバー)を中心に譜陣を描いていった。

“久しいな、マリア。我等との契約は果たしたか…”

オリジンの言葉に

「えぇ、ローレライは消滅したわ。」

彼等と交わした交わした契約遂行完了の旨を伝える。

「でも、ローレライが残した残骸が残っているわ。」

“変質した瘴気の事か…”

「そう、あれは人の業によって生まれ、ローレライによって変質してしまった。人の業だけであれば滅びも受け入れましょう。でもローレライの手で踊らされるのは赦せないわ。」

ユラリと揺らめくオリジンを見詰め

「瘴気を消す手伝いをして欲しいの。」

拒否権は無いと言外に告げた。

“…良かろう。但し、お前という人間は消滅(きえ)て、以前と同じようで異なる世界で生きる事になるだろう。それで良ければ助力しよう。”

「それで十分だわ。」

私はオリジンの指示で音素を集め譜陣を描いていく。

これで力を解放すれば私は消える。

星の剣(エクスカリバー)を掲げ、力を解放しようとしたその時、此処に居る筈のない人が居た。

「マリア!!」

私を止めようと手を伸ばす彼に私は

「さよなら、  」

別れを告げ力を解放した。

身体がバラバラになる感覚がする。

「…… !……っ   !!」

彼が何を言っているのか私には解らない。

融けて消えて行く私の身体に私は自嘲した。

復讐に駆られなかったら私は違った人生を歩めただろうか?

消える最期に気付いた気持ちは、伝える術はない。

これが私の罰なのだ…



レムの塔から光の柱が昇り、瘴気に覆われた空は蒼を取り戻し、枯れた大地には美しい草花が生い茂った。




*******************



-SIDE マリア-



あの世界で私は消滅したのを覚えている。

眼を覚ませば病院のベットの上で、身体が自分の物でないように重かった。

混乱する私に私の両親と名乗る人達が事故に遭ったのだと教えてくれた。

長い間、昏睡状態に陥っていた私を心配していたと…

私が消える瞬間にオリジンが言っていた言葉を思い出す。

“お前という人間は消滅(きえ)て、以前と同じようで異なる世界で生きる事になるだろう”

それがどういう意味なのか鏡を見て納得した。

だって私は彼女だったのだから…

病院生活も慣れた頃、加害者である家族の方が面会したいと希望され私は了承した。

「済まない!謝っても済む話でないと解っているが俺のせいなんだ!俺が松園を急かしたから!」

「坊ちゃんのせいではありません。私が悪いのです!」

イケメンに行き成り土下座されて私は内心面倒臭いな、と思ったわ。

だって私はどのような経緯で事故にあったのか解らないのだもの。

違う世界の彼女の身体を奪ったのは確かなのだから…

「顔を上げて下さい。」

私の言葉に恐る恐る顔を上げる青年と中年の男性に

「私は全てを忘れてしまいました。でもあの日、視界が悪い悪天候だったのだと聞きました。誰が悪いというのなら此処にいる全員です。松園さん?を急かした貴方、彼を諌めなかった松園さん、周囲に気を付けなかった私。」
偽善で詭弁を語った。

全てを覚えているけれど、彼等を知らないのは事実だもの。

相手がどう受け止めようとどうでも良い。

「幸いリハビリをすれば日常生活に戻る事は出来るとお医者様も言ってたし気にする事はないわ。」

一度命を世界を放り出した私が生きているのだ。

これ以上のモノは無いだろう。

リハビリをしても日常生活に辛うじて戻れるのであって、障害と傷は残ると言われている。

でもそれは、私が犯した罪の証なのだ。

甘んじて受け入れよう。

「私は、今此処に生きているんだもの。それ以上望む物なんてないわ。」

そう言い切れば彼等は驚愕した顔で私を見た。



その後、私の治療費や多額の慰謝料を支払ったのが跡部財閥と知る。

世界でも有数な財閥だと言うけれど、私がいた世界では存在しなかった彼等。

だからこそ実感した。

似て異なる世界なのだと…

リハビリを終え、私は彼の支援に甘えつつグランマニエ皇国へ留学する。

グランマニエ皇国、これもまた私の世界に無かった国。

私は全寮制であるニーズホッグ学園へ、編入した。

精神年齢はオバサンなんだけど…

と心の中で苦笑を洩らしつつ挨拶をする。

「初めまして、グランマニエの皆さん。日本からやってきましたマリア・イチジョウです。不慣れな事もありますが、仲良くして下さいね。」

第一印象が肝心とばかりに笑顔で微笑めば、視線の先には懐かしい人が居た。

「    」

無意識に小さく呟いた名前に彼と目が合う。

怪訝そうな表情(顔)をする彼に思い知った。

此処はアノ世界ではない。

彼は私を知らない。

真っ白になった私達の思い出。

きっと私は泣き笑いのような表情(かお)をしているのでしょうね。

「宜しくお願いします。」

今度こそ私は貴方と違う思い出を作って生きたい。


初めまして、よろしく……




-SIDE ヒメコ-



気付いたら私はベットの上だった。

あぁ、これは夢だったんだと私は安堵したわ。

だって私が殺されるなんてあるわけ無いじゃない!

でも私の部屋じゃないの。

高級マンションの一室って感じなんだもん。

元の世界に戻ってきたのに全然知らない場所にいるんだし、ちょっと不気味じゃない?

だから此処が何処か私は調べる為に部屋を調べる事にした。

アビスの世界でもそれなりの調度品に囲まれていたから見る目はあるもん。

物凄く高そうだな。

もしかして、これって全部私の物?

ふと窓を見れば、私はモデルのマリアだった。

そして気付いた。

私はモデルのマリアで、平凡で冴えない高校生でもなくて、アビスの世界で殺されたのは夢だったんだわ。

「うふふ、あれは悪夢だったのよ。私は世界が認めるトップモデルなの!」

世界のトップモデルが本当の私だったんだわ。

ふかふかとしたソファーに腰を下ろし、私はこの部屋を満喫した。

キィっと開けられた扉に私は胸を躍らせる。

きっと私のマネージャーだわ!

だって私はトップモデルなんですもん。

仕事の話に決まっているわよね。

入ってきた中年デブに私は顔を顰めた。

こんなのが私のマネなわけ?

まぁ、チェンジして貰えば良いわよね。

「仕事は?」

取り合えず私は真面目だし、仕事するわよ。

何たってトップアイドルなんだから!

そんな私に冴えないデブマネは

「あぁ、もう準備は整っておるよ。」

ニタニタと厭らしく私を見た。

何なの!

このセクハラオヤジ、マジで死ね!

仕事が終わったら社長に抗議しなきゃね!

私はデブマネの後ろに着いて行く。

開かれた部屋には無数の男がいた。

何だか変な感じね。

もっと照明とかあると思ったんだけどベット一つってどういうこと?

そんな私の考えを余所にデブマネが

「さぁ、皆さん!このメス豚を好きにしてやって下さい!」

ドンとベットに突き飛ばした。

「ちょっと何すんのよ!!」

ギラギラした目で私に圧し掛かってくる男達に恐怖を覚える。

「放して!アンタ達、私にこんな真似をして良いと思ってんの!?」

そう叫べば

「金で買ったんだ。良いに決まってんだろ。」

「そーそ、君みたいに表社会追放された人間以下に人権なんて無いのさ。」

ゲラゲラと下品な笑い声が返って来た。

「い、いや!止めて!ヤメテエェェーーーーーーーーー」

ビリビリと破かれる服、這い回る手、無理矢理開かれる身体に私は絶望する。

違う!

違う!

こんなの私じゃない!

返して!

返してよ!!


毎日、違う男達に身体を玩ばれた少女はブツブツと空言を呟き壊れた。


返して…それは誰の言葉??


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追記:

マリアさんが再会した相手はご想像にお任せします。

似非聖女様は畜生以下としてデブに一生飼われる事になるでしょう。

ご愁傷様です!

本当はもっとエゲツナイんですけどね…



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