それは偶然だった。
奇抜な服とド派手に化粧をした顔。
素であれば美人だろうに何とも惜しい。
キナ臭いヴァン・グランツが連れて来た変人。
但し、譜業に限りその頭脳はオールトランド随一の天才とも言われていた。
そんな派手な人物に元から関わるつもりは無かったのだけれど、その日は運が悪かった。
空いている席が無かったのだ。
と言っても死神ディストが座る席だけは、半径3bのクレーターが出来ていたの。
色々と噂を聞くが、独りで食事を食べている姿が何だかこの世界に来た当初の私に似ていた。
「ご一緒しても宜しいでしょうか?」
無視されているのか、返事がないので了承の意と取らせて貰い私も彼と一緒に黙々と食事を始めた。
食事を始めてから数分が経過した時
「のっわ!!」
何とも奇妙な叫び声を上げたディストに
「どうかされましたか?」
食事を中断し顔を上げる。
彼はまるで私を奇妙なモノを見るような目で
「どうして貴女のような見習いが此処に座っているのです!?」
今更な言葉に私は思わずクスリと笑みを零した。
私に笑われた事が侮辱されたと思った彼はキーと意味不明な奇声を上げる。
「座る席が無かったのよ。」
そう伝えればキョロキョロとディストは周囲を見渡して納得したようだ。
その日を境にディストを見掛けたら一緒に食事をする事になった。
この習慣が一月程経過した時に
「どうしてこの席に座るのです?」
物凄く疑問とばかりに質問された。
あぁ、矢張り彼は独りなのだと再度認識させられる。
「独りの食事は味気ないの。私は一緒に食事を取る人がいないから。」
これは本当。
ある程度、調和を乱す事なく人間関係を教団内で築き上げているけれど、食事までは一緒に食べたいと思わなかった。
だって元の世界が恋しくなるから…
その点、ディストは私に似ているせいか憐憫の情しかない。
私の言葉をどう解釈したのか、彼は嬉しそうに
「な、なら仕方ありませんね!この薔薇のディスト様が一緒に食事をしてあげましょう!!」
と高笑いをした。
「私はマリアよ。宜しくね、ディスト。」
寂しさと哀しみを虚栄心に隠す所も似ているのね。