獣の娘
アスランさんの依頼で私はダアトに潜入する事になった。

秘予言を探るなら神託の盾に入るのが一番だろう。

私は順調に神託の盾に入団した。

勿論、軍人としても教育施設に放り込まれるのだけれど実力主義の世界だからこそ実力が認められれば免除も有り得るわけ。

と言ってもそんなに派手な立ち回りをすれば私の存在が浮き彫りになってしまうので却下。

なら上の地位にいる人で且つ自分の意に添い易い人間に取り入れば良い。

全ての成績を平均より少し上に設定した私は、もしかしたら出来る人材に育つかもしれない兵士見習いだ。

手抜きって結構加減が難しいのよね。

でも評判は良いのよ?

人間関係が情報収集の源ですから!

自称ユリアの子孫とは大違いなの。

そんな私がダアトに潜入して数ヶ月の月日が経過した。

そろそろ上に探りを入れて繋ぎを作っておきたいな?

と思案していた兵舎裏を歩いていたら一匹のライガが怪我をしているのを見つけた。

「グルルルル」

警戒し威嚇しているが殺気は見られない。

私が一歩近付けばライガは激しく威嚇する。

でもやっぱり殺気は無かった。

「怪我の手当てをしたいのだけど…」

困惑気にライガを見るが一向に警戒を解く様子がない。

ふと考えた。

このライガは人間に慣れているのではないだろうか?

なら武器を置いて近付いて治療すればどうだろう?

別にライガが心配だとかそういう心優しい気持ちではない。

単に人馴れしたライガの怪我を治し、どの程度使役出来るのかを知りたいだけだったりした。

私はライガに分かるように腰に挿した剣を足元に置き武器が無い事を示した上で、傷付いたライガの元へ行く。

ライガも私が自分を害する意思が無いと理解したのか威嚇は少しだけ軽減された。

「ちょっと傷が深いわね。」

持っていた水筒から出した水で傷口を洗う。

相当痛いだろうに身動き一つしないライガに私は感心した。

誰かのペットなのだろうか?

第七音素を集め

「キュア!」

回復呪文を掛けた。

傷が塞がって行くのを見届け私はその場を後にする。




*******************



「…あの、貴女がマリア、です?」

まだ10代になったばかりの幼い少女に声を掛けられた。

私は彼女に目線を合わせる為、膝を折り

「えぇ、私がマリアですが、貴女は?」

分かっているが彼女の口から話して貰わないと、ね?

少女はキュっと眉を寄せ

「私は、アリエッタ、です。」

自己紹介してくれた。

アリエッタ…確か幼いながらも高い戦闘能力と導師のお気に入りで守護役になった子。

確か魔物を従えるとも聞くが、もしかしたら先日助けたライガは彼女の物なのかな?

「これは失礼しました、アリエッタ奏長。」

臣下の礼を取る。

階級は彼女の方が上だものね。

「顔を上げて、下さい、です。」

アリエッタの許可の下、顔を上げ彼女を見た。

私のように臣下の礼までして上司だとキッパリと扱われた事がないのだろう。

その瞳に宿すのは困惑。

「アリエッタの兄弟、マリアが助けてくれた。ありがと、です。」

拙くも礼を述べるアリエッタに私は、自然と笑顔が漏れた。

「あのライガはアリエッタ奏長のご兄弟だったのですね。」

「…マリアは、ライガ、怖くない、ですか??」

アリエッタの言葉に私はニッコリと最上級の笑顔で

「問答無用に襲われれば、私は相応の対処をしますが、アリエッタ奏長のご兄弟は無闇に人を襲わないのだと私は認識しました。威嚇はされましたが、殺意は感じられなかったので。」

噛み砕いて言い聞かせる。

アリエッタはライガを褒められた事が嬉しかったのか、年相応の笑顔を見せた。

「アリエッタの、自慢の、兄弟です。マリア、また会いに来ても良い、ですか?」

キラキラと期待を込められて見つめられるのは少し恥ずかしいものがあるね。

私は苦笑し、是と返した。



数日後、私は導師イオンと対面を果たす事となる。







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